STUDY

スピードの向こう側

僕をご存知の方、こんにちは。
ご存知ない方、はじめまして。
流浪のデザイナー、Y2です。

 

デザイナーのくせに、画像が少ない長文をつらつらと垂れ流していますが、今回も長いですよ!

 

 

「最高か、最速。」

 

この業界で飯が食えるようになるまで、僕を育ててくれた恩師からいただいた言葉のひとつです。この世界で生きていくためには、せめて「最高」であるか「最速」であるかしかない。というような意味だったと記憶していますが、僕の解釈は少しだけ違っています。クリエイターたるもの、常に「最高」だけを目指して日々の仕事に取り組めるのが理想なのかも知れません。しかし、そこは仕事である以上「納期」という名の締め切りが必ずあるわけで、さらに言えばWEBという特性上、デザインだけで完成することはまず無く、設計や実装という作業にもデザインと同じくらい、いえ、デザイン以上の時間が必要になり、つまり「最速」を求められます。

 

ですのでデザイナーは、いかに短い時間(最速)で、その時点で到達できる限界(最高)に持っていけるか。が勝負です。「最速の最高」とでも言い換えればいいでしょうか。この言葉を頭の隅に常に置きながら仕事をするのとしないのとでは、おのずと結果が違ってきたりします。

 

この表面的には正反対だと思える「最高」と「最速」を両立するために、僕が日頃意識しているいくつかの事を、今回は書いてみたいと思います。

 

 

余談にはなりますが、僕はもともと工業系の学校にいたので「工作機械の母性原理」というものを、わりとしつこく教えられました。工作機械の母性原理というのは、一般的なそれとは少し違います。いま世界に存在している全ての機械は、そのどれもが何かしらの工作機械によって生み出されたものであり、その工作機械には「自身以上の精度で新たな部品を生み出すことが出来ない」という母性原理が存在するのです。これでは機械の精度は今以上に進化できないはずでは?という矛盾が生まれるようにも聞こえます。でも実際はそういう事ではなく「工作機械の精度」とは、乱暴にいうと「誤差の範囲」であり、1000個のなかに1個くらいの確率で、ほぼ誤差がない、おそろしく精度が高い部品が生まれる可能性があり、さらには、その高い精度の部品だけを集めて作った新しい工作機械の精度(=誤差の範囲)は、その部品を生んだ工作機械よりも向上させることができる。と言われています。僕はこの「工作機械の母性原理」がクリエイティブにも適用されるのではないかと思っていまして、例えばティレクターからデザイナーへ、デザイナーから実装担当者へと引き継ぐ、情報やデザインの精度が、最終的な成果物の精度に繋がっていくと考えています。

 

 

それでは本題。

 

 

ひとつめは

「細部は置いといて、とにかく先に全体をつくってしまう」

 

「デザインの魂は細部に宿る」とも言われるように、本来であれば細部こそがデザイナーの腕の見せ所ではあるんですが、最速を求められる世界では少し勝手が違います。絵を描く時に似ているかも知れません。いきなりディティールから描いてしまうと、そもそも時間が足りなかったり、最終的に紙におさまりきらなかったり、最悪の場合メリハリがなくなってしまって、その絵で表現したい、見て欲しい部分がどこなのかがわからなくなってしまいます。それを避ける意味でも、まずは全体を薄く組んでみてバランスを整えたうえで、細部の濃度を足していくほうが結果的には近道なのではないかと思っています。急がば回れの精神です。

 

 

ふたつめは

「思いついたら頭だけで考えずに、とりあえず手を動かす」

 

頭の中で考えてるだけでは、その考えから抜け出して新たなアイデアを思いつくのに僕は時間がかかります。デザイナーは頭だけではなく、目や手でも考えられる生き物だと思っているので、それを使わずに頭だけで考えてしまうのはもったいないです。すべて使えば「通常の3倍」です!

 

 

みっつめは、そうですね……

「行き詰まったらアレコレ悩まず、ちょっと忘れてみる」でしょうか。

 

忘れてみるとは言っても、ホントに忘れるのは無理なので、この場合は「別の事をする」ということで、要は息抜きですね。僕がよくやるのは「近所のコンビニに行く(外に出る)」とか「SNSをチェックする(わりと長めw)」とか「雑誌を読む(漫画もありw)」とかでしょうか。極めつけは「別のデザインをする」ですかね。僕は普通だと思ってたんですが、この「デザインの息抜きにデザインをする」というのは、わりと変態みたいですw

 

 

最後は

「とにかくやる」です。

 

いや、もう、しのごの言わずに、とにかくやるんです。

 

 

最終的に根性論みたいになってしまいましたが、初めからスピードが早い人なんていません。よほどいい加減でない限り、スピードなんてほっておいても上がっていきます(経験則)。それよりデザイナー自身が「最速」を求めることは間違っていると思いますし、危険だとも思います。あくまで追い求めるのは「最高」であって欲しいですし、僕自身もそうありたいと思います。ですが求められるのがスピードであることが多いのも現実です。そんな場合でも、その最速と最高のせめぎ合いの中から「最速の最高」を生み出せるように、いつも頭の片隅に「最速」を忍ばせて、今できる「最高」を、「スピードの向こう側」を目指していきたいと思います!

 

 

ご精読ありがとうございました。