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絵本という体験

こんにちは。ディレクターの菊地です。今回は絵本について。
菊地には3歳になる娘がおります。子どもが生まれるまでは、それほど絵本に興味はなかったのですが、生まれてみると、やはり不思議なもので「子どもの成長や教育に絵本はいいよ〜」とか、「親子のコミュニケーションに絵本はいいよ〜」という情報に、やはり影響されるものでして(笑)。自然と絵本の数が増えてきました。

思い返してみると自分が子どもの頃にも両親が絵本を与えてくれて「ノンタン」とか「14ひきの〜」とか好んで読んでいたなと。その時から自分が親になるまで、絵本という媒体からは、少し離れていたわけですが、改めて出会いなおしてみると、思っていた以上に学びや、感動があって驚きます。

絵本はメディアとしては小さいですが、その分、いろいろな工夫が織り込まれていて、現在ディレクターという立場で「体験」について考える身としては、とても刺激や新しい視点得られる所があります。ですので今日は、その絵本から得られる刺激や視点について、お気に入りの絵本ともに恣意的に分類しながら書いてみたいと思います。

<形>という視点

かたち 五味太郎

「きんぎょがにげた」「たべたのだあれ」など多数の本を出している五味太郎の絵本。まる・さんかく・しかくという基本図形3つをモチーフに話が組まれています。それぞれのかたちが生み出す印象や世界観を的確にとらえていて「ああ、そうだよね丸ってそう感じるよね。四角ってそう感じるよね」という、当たり前だけど、その当たり前に気づかせてくれる本です。個人的には「しかく」で登場するロボットがしかくいおうちへ帰る絵が好き。

<音>という視点

もけら もけら 山下 洋輔 (ぶん), 元永 定正 (え)

ジャズ・ピアニストの山下洋輔が文章を、モダンアートの作家元永 定正が絵を書いた作品。絵本屋で勤める友人に勧められて購入した本です。物語はなく「もけら もけら でけでけ」という意味不明な音と、意味不明な絵で構成されているのですが、その音と絵が不思議な説得力を持って迫ってきます。音や響きから想起されるイメージは確かにあるし、意味がないからこそ、そのことに気付かされような絵本。「そうだよなぁ”じょわらん”って音って、絵にするとこんなかもな」と不思議な納得感があります。(著作権的に中身を見せられないのが残念。ぜひ読んでみてください)

<時間>という視点

ユリー・シュルヴィッツ よあけ

本屋でたまたま手にして読んだら心底感動してしまって娘のためにではなく自分のために買ってしまいました。娘からは「お父さん、この絵本好きだよね」と突っ込まれます。娘は全然興味を示しません(笑)。ただ、自分としては最も好きな絵本。お話としてはドラマチックな展開はなく、淡々と夜が明けていく様を描いている本です。ただ、ここまで「時間」の経過を美しく描けるものかと。ただただ感動。夜が明けた瞬間の絵は、ぜひ実際に手にとって見ていただきたい美しさです。

<?>という視点

ジャリおじさん 大竹 伸朗

こちらも完全に自分の趣味で購入した絵本。大好きな大竹伸朗が書いた絵本です。ただ、こちらの絵本は娘にも比較的好評。鼻の頭にヒゲのあるジャリおじさんの冒険譚。話も出てくるキャラクターも荒唐無稽。でも不思議なリアリティがあります。どこか神話の世界にも通じているような作品。理路整然と説明することだけが、真実を表現するわけではないということに気づかせてくれる絵本です。

と、今回はお気に入りの絵本をいくつかピックアップして紹介してみました。少しでも気になる本があったら、ぜひ手にとってもらえたら嬉しいです。