AIによる解析で明らかになったハッブル宇宙望遠鏡の異常天体
ハッブル宇宙望遠鏡は30年以上にわたり宇宙を観測し続けてきました。一見すると研究し尽くされたように見えるその観測データの中から、AIを使った解析によって、これまで見過ごされてきた天体が数多く見つかっています。過去のデータを見直すことで何が明らかになったのか。本記事では、その中身を順を追って整理します。
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AIはハッブルの何を変えたのか:人間では追いつかなかった「探索」の壁
ハッブル宇宙望遠鏡の観測記録は、約35年分に及びます。今回の研究で使われたハッブル・レガシー・アーカイブには、約1億枚の画像切り出しデータが保存されています。1枚あたりは数十ピクセルと小さな画像ですが、その数は人間が目で確認できる範囲を大きく超えています。
これまで天文学では、異常な天体は研究者が画像を一つずつ確認する中で、偶然見つかることがほとんどでした。経験を積んだ研究者であっても、膨大なデータを同じ基準で見続けることは現実的ではありません。市民参加型の観測プロジェクトもありますが、ハッブル級のアーカイブ全体を網羅するには限界がありました。
こうした状況を受けて開発されたのが、欧州宇宙機関(ESA)のDavid O’Ryan氏とPablo Gómez氏によるAIツール「AnomalyMatch」です。このAIは、特定の天体をあらかじめ分類するのではなく、大量の画像を横断的に比較し、その中で見た目が少数派となるものを抽出します。形状や明るさの分布に着目し、「全体から浮いている」画像を見つけ出す仕組みです。

AnomalyMatchによって抽出された候補は、その後、研究者が目視で確認しています。AIが結論を出したわけではなく、探索の入口を広げた点が重要です。その結果、わずか2日半で1,300以上の異常天体が特定されました。これまで物理的に不可能だった規模の探索が可能になったことで、次に注目すべきは「実際に何が見つかったのか」という点です。
何が見つかったのか、そして何がまだ分かっていないのか

今回見つかった異常天体の多くは、銀河同士が合体したり、重力によって相互作用している途中の姿でした。これらの銀河は形が大きく崩れており、星やガスが細長く引き伸ばされた構造を持っています。個別には知られていた現象ですが、アーカイブ全体を対象にした探索によって、数としてまとまって確認されました。
また、重力レンズ現象も多数見つかっています。これは、手前にある銀河の重力によって空間が歪み、背後の銀河の光が弧や輪のように見える現象です。理論としては以前から知られていましたが、過去のハッブルデータにこれほど多く含まれていたことは、これまで十分に把握されていませんでした。
そのほかにも、星形成が局所的に活発な銀河、ガスが外側に引き伸ばされたクラゲ状銀河、天の川銀河内にある横向きの惑星形成円盤などが確認されています。特に重要なのは、数十個の天体が既存の分類体系に当てはまらなかった点です。これらが新しい現象であるかどうかは現時点では判断できませんが、現在の理論では説明しきれない対象が確かに存在していることを示しています
今回の成果は、新しい観測を行わなくても、過去に集められたデータの見方を変えることで、新たな発見につながる可能性があることを明らかにしました。ハッブルのアーカイブは、その可能性を示す一例にすぎません。
まとめ

いかがだったでしょうか?
ハッブルの過去データには、長年見過ごされてきた天体が数多く含まれていました。
AIを用いた探索によって、人間の手だけでは届かなかった範囲が見えるようになったことが、今回の研究から分かります。
観測装置そのものだけでなく、既存データをどう扱うかが、今後の研究成果を左右する重要な要素になりつつあります。