2026.02.10 | テクノロジー

TinderのAI「Chemistry」とは?スワイプ疲れを減らす新機能

TinderがAI機能「Chemistry」をテスト導入し、広がる「スワイプ疲れ」への対策を進めています。質問への回答やCamera Rollの情報を使い、延々とプロフィールを探す体験から、候補を絞って提示する形へ移行しようとしているのです。背景には利用者の疲弊と登録者数の減少があります。

スワイプ型マッチングが抱える構造的な限界

Tinderが普及させたスワイプ型マッチングは、直感的で分かりやすい仕組みです。画面に表示されたプロフィールを見て、興味があれば右、なければ左へ流すだけなので、初めて使う人でも迷いにくい設計でした。ただ、この分かりやすさは同時に「終わりが見えにくい体験」も生みます。スワイプを続ければ続けるほど次々と候補が現れるため、ユーザーは「選択肢が無限にある」ように感じやすくなります。
しかし、現実のマッチングは一方的には成立しません。相手も同じように「いいね」を返して初めてマッチし、そこから会話が始まります。さらに、マッチした後に会話が続くかどうかは別問題で、関係が深まる保証もありません。

つまり、プロフィールを大量に見たとしても、その行動量が成果につながるとは限らないのです。このギャップが積み重なることで、「見ているのに進まない」という感覚が生まれやすくなり、それが「スワイプ疲れ」の中身だといえます。
こうした状況は数字にも表れています。Tinderの第4四半期では、新規登録が前年同期比で5%減少し、月間アクティブユーザーも9%減少しました。Matchは前四半期より改善しているとも説明していますが、少なくともユーザーが増え続ける状況ではなくなっていることは読み取れます。
スワイプ型はTinderの象徴でした。しかし今、その象徴が「疲れの原因」として語られる場面が増えています。そこで「スワイプを増やす」のではなく、そもそもの探し方を変える方法として、TinderはAIを使った新しい体験を試し始めました。

AI機能「Chemistry」が変えようとしている出会いの形

Tinderが試しているAI機能「Chemistry」は、スワイプ中心の設計を見直すための取り組みです。現時点ではオーストラリアでのみテストされており、広く展開された機能ではありません。
Chemistryの特徴は、ユーザーの情報をプロフィール文だけで捉えない点にあります。Tinderによれば、ユーザーは質問に答えることでAIに自分を理解させることができ、さらに許可をすればスマートフォンのCamera Rollにもアクセスさせられます。
MatchのCEOであるSpencer Rascoff氏は、Chemistryを「AIを通じてTinderとやり取りする方法」と説明しました。さらに、質問に答えることで「多くのプロフィールを延々とスワイプする代わりに、候補を1つか2つだけ提示してもらう」形を示しています。これは、ユーザーにより多くの行動を求めるのではなく、提示の仕方そのものを変える考え方です。

またMatchは、Chemistry以外にもAIを別の形で活用していく可能性を示唆しています。加えて、女性ユーザーに表示されるプロフィールの順序をAIで調整するなど、推薦の仕組みについても実験していると説明されています。
さらにMatchは、Z世代が抱える課題として「関連性」「本物らしさ」「信頼」を挙げています。この流れの中で紹介されているのが、Face Checkです。Face Checkは顔認証による本人確認で、悪質ユーザーを減らす目的があります。Tinderでは、この仕組みにより悪質ユーザーとのやり取りが50%以上減少したとされています。そしてMatchは、プロダクトだけでなくマーケティング面でもTinderの立て直しを狙っています。Tinder向けに5,000万ドルのマーケティング費用を投じ、TikTokやInstagramでのクリエイターキャンペーンを行う方針も示されました。
Chemistryがどこまで効果を出すかは、まだテスト段階のため断定できません。ただ、Tinderが「スワイプを続けさせる」のではなく、「スワイプを減らす方向」で体験を変えようとしている点は、はっきり読み取れます。

まとめ

いかがだったでしょうか?
TinderはAI機能「Chemistry」を通じて、スワイプ中心の探し方を見直そうとしています。
質問やCamera Rollを使い、候補を絞って提示することで、スワイプ疲れを減らす狙いが示されました。
Face Checkやマーケティング投資も含め、関連性と信頼の改善にも取り組んでいます。
今後、マッチングアプリの「探し方」がどう変わるのかは注目点です。