2026.02.18 | テクノロジー

富士通、Takaneで要件定義〜結合テストを自動化する開発基盤を運用開始

医療や行政の業務ソフトは、法改正のたびに改修が発生し、毎回大きな負荷になります。富士通はこの課題に対し、日本語LLM「Takane」とAIエージェント技術を使い、要件定義から結合テストまでを自動化する開発基盤の運用を始めました。

Takane×マルチAIエージェントで“開発工程そのもの”を自動化した

富士通が開発した「AI-Driven Software Development Platform」は、ソフトウェア開発の要件定義から設計、実装、結合テストまでをAIで自動化することを狙った開発基盤です。ポイントは、1つのAIがすべてを行うのではなく、複数のAIエージェントが工程ごとに役割分担し、協調しながら作業を進める点にあります。
この基盤では、大規模言語モデル「Takane」と、富士通研究所が開発した大規模システム開発向けのAIエージェント技術を活用します。AIエージェント技術は、主に3つの要素で構成されています。
1つ目は、法令文書を網羅的に理解し、変更内容を分析したうえで、設計書やソースコードと突合し、改修要件や改修箇所を特定する技術です。
2つ目は、ノウハウや開発ルールを理解し、それを踏まえながら品質検証を並行して行う、自律設計・監査の技術です。
3つ目は、AIがテストシナリオを探索し、要件への適合性を確認するための組み合わせテスト仕様とテストコードを生成する、結合テスト生成の技術です。

つまり今回の話は「コードを書けるAIが増えた」という話ではありません。変化し続ける大規模システムをAIが理解し、改修に必要な作業を工程単位で組み立てて進める仕組みを、運用まで持っていった点が本質です。
そして次に気になるのは、「実際にどこで使われ始めているのか」という点でしょう。

医療・行政の法改正対応に適用開始。実証で3人月→4時間の結果も

この開発基盤はすでに現場適用が始まっており、2026年1月から「2026年診療報酬改定」に伴うソフトウェア改修へ適用が開始されています。富士通は、富士通Japanが提供する医療および行政分野の業務ソフトウェア全67本について、2026年度中に本基盤の適用を目指すとしています。
さらに注目されるのが、2024年度の法改正対応を題材にした実証実験です。約300件の変更案件のうち1案件において、従来の開発手法では3人月かかっていた改修期間が4時間に短縮できたと公表されています。結果として、生産性を100倍に向上できる効果を確認したという内容です。もちろん、この結果がすべての案件で同じように再現できるとは限りませんが、改修という現実のテーマで具体的な数字を示した点は重いです。

富士通はこの基盤の活用により、法改正や制度改定に伴う改修スピードを上げ、改修におけるシステム確認の負荷を軽減できるとしています。その結果として、患者や住民、顧客サービスの向上につながる施策やサービスの企画・開発に時間を回せるようになる、という位置づけです。
この方向性は外部の見方にも表れており、IDC Japanは「複雑な既存システム資産をAIが理解・加工できる状態へ再定義し、ウォーターフォール型開発プロセス全体の自動化を狙う取り組み」とコメントしています。また、キユーピーデジタルイノベーションは、曖昧さや抜け漏れを自動で修正する品質管理の仕組みに期待を寄せています。
富士通は今後、2026年度中に適用範囲を金融や製造、流通、公共などの分野へ拡大し、顧客やパートナー企業向けのサービス提供も開始していく方針です。法改正対応のように「避けられない改修」を、品質を保ちながらどう回すか──この問いに対して、運用開始という形で一歩踏み出した発表だといえます。

まとめ

いかがだったでしょうか?
富士通は「Takane」とAIエージェント技術を使い、要件定義から結合テストまでを自動化する開発基盤の運用を始めました。
すでに診療報酬改定対応で適用が始まり、実証では3人月が4時間に短縮された事例も示されています。
一方で、対象は変化し続ける大規模システムであり、実運用でどこまで適用範囲を広げられるかが次の焦点になります。
2026年度中に67本へ展開する計画が、今後の進捗を測る具体的な目安になりそうです。