Qodo 2.1が解決するAIの文脈忘れ問題:Rules Systemの仕組みとは
AIによるコーディング支援は普及していますが、多くのツールはセッションを閉じると直前の文脈を保持しません。Qodo 2.1は、この弱点に対し「Rules System」という仕組みを発表しました。AIが組織の基準を継続的に扱えるようにする試みです。
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AIコーディングツールの弱点=ステートレス問題
現在主流のAIコーディングツールは、基本的に「ステートレス」です。ステートレスとは、過去のやり取りや判断履歴といった状態を保持しない設計を指し、セッションを終了すると、それまでの会話やレビューの背景は失われ、次回は前提のない状態から処理が始まります。
短いコードの補助であれば大きな問題にならない場合もありますが、実際の開発では複数人が長期間にわたり同じコードベースを扱います。過去にどのような指摘があったのか、どの書き方が避けられてきたのかといった文脈は重要であり、そこが共有されていないと、レビューは同じ場所を何度も行き来しがちです。ところがステートレスなAIは、そうした背景を継続的に前提にする構造にはなっていません。

開発者は回避策として、Markdownやテキストファイルにルールや注意点を書き残す方法を使っています。Claude CodeやCursorを使う現場でも見られる方法ですが、プロジェクト規模が大きくなるほど情報量は膨大になります。数多くのメモの中から適切なものを探す形になり、結果として「覚えているようで覚えていない」状態になってしまいます。さらに、コードの品質は客観的な正解だけで決まるものではありません。企業ごとに重視する設計思想やレビュー観点は異なり、同じ書き方でも評価が変わることがあります。だからこそ必要になるのは、単なる知識ではなく「その組織が何を良しとしてきたか」という判断の積み重ねです。
Qodoが提示したのは、まさにそこをAI側に持たせるという方向でした。
Qodo 2.1のRules Systemがやっていること

Qodo 2.1で発表されたRules Systemは、組織内のコーディング標準を一元的に扱う仕組みです。特徴は、ルールを人が手作業で書き続けるのではなく、実際のコードやレビュー履歴から自動生成する点にあります。
Rules Discovery Agentは、コードベースやプルリクエスト(PR)のフィードバックを分析し、繰り返し現れる基準や判断を抽出します。現場で実際に使われている基準をもとにルールを形成する設計のため、「書いたけれど使われない規約」になりにくいことを狙っています。
Rules Expert Agentは、生成されたルールの重複や矛盾、古くなった基準を検出します。Qodoはこれを「rule decay(ルールの劣化)」と呼んでおり、ルールが増え続けると整理が追いつかなくなる問題を想定したうえで、継続的なメンテナンスを組み込んでいます。
確定したルールはPRレビュー時に自動で適用され、違反があれば指摘し、修正案も提示されます。さらに、ルールの採用率や違反傾向を分析できるため、標準が実際に運用されているかを数値で確認できます。つまりRules Systemは、ルールを「置く」仕組みではなく、発見し、整理し、適用し、効果まで測るところまでを一体で扱う構造になっています。
そして、この仕組みが本当に意味を持つかどうかは、最終的には「どれだけ成果につながったか」で判断されます。次のセクションでは、Qodoが示した数値や導入の現実的な話に踏み込みます。
何が変わるのか(価値・実証・今後)
Rules Systemは、記憶を外部ファイルとして検索する形ではなく、AIエージェントと統合しているとQodoは説明しています。CEOのItamar Friedman氏は、判断と記憶が構造的に結びつく設計だと述べており、ルールを単なる参照情報ではなく、レビューの前提として扱うことを意図しているようです。
実証として、Qodoは他プラットフォームと比較し、精度と再現率が11%改善したと公表しています。また、100件の本番環境のPRから580件の欠陥を特定したと説明しています。ここで重要なのは、印象論ではなく、改善率や検出件数という形で結果を示している点です。

導入形態はエンタープライズを想定しています。オンプレミスやVPN経由で自社インフラに配置する方法、Qodoが隔離環境を提供するシングルテナントSaaS、一般的なセルフサーブSaaSが用意されています。ルールやメモリの置き場所も要件に合わせられるとしており、データガバナンスの懸念を意識した設計です。
料金はシート単位で、無料のDeveloperプラン、月額38ドルのTeamsプラン、カスタム価格のEnterpriseプランがあります。Friedman氏は、AIエージェント時代にシート課金が妥当かどうかという議論があることに触れつつ、価値に応じて支払う考え方を示しています。
また同氏は、2026年末にはステートレスなAIから、より密接に記憶と結びついた設計へ移行すると予測しています。これはあくまで同氏の見解ですが、少なくともQodo 2.1は「AIが文脈を持てない限界」を、仕組みとして正面から扱った例と言えるでしょう。
まとめ

いかがだったでしょうか?
Qodo 2.1は、AIコードレビューに「組織の基準」を継続的に持たせるという方向を具体的な仕組みとして示しました。ルールを生成し、整理し、適用し、その効果まで測定する設計は、単なる補助ツールとは異なる発想です。AIを実務で使う場面が増えるほど、判断の軸をどう共有するかは避けて通れません。Rules Systemは、その課題に対する一つの明確な回答と言えるでしょう。