2026.04.02 | テクノロジー

医療AIの限界はデータ不足!? Mantis Biotechの解決策とは

医療や創薬の分野でAIの活用は広がっていますが、見落とされがちな問題があります。それは「学習に使うデータが存在しないケースがある」という点です。特に希少疾患や特殊な症例では、十分なデータが集まらず、AIが機能しにくい状況が続いています。この課題に対し、Mantis Biotechは人間のデジタルツインという手法を提示しています。

AIが医療で伸びきれない理由は「データが存在しない」から

医療分野では、大規模言語モデル(LLM)を活用することで、診断支援や臨床判断の補助、創薬への応用などが期待されています。しかし現実には、AIの性能以前に「学習に使えるデータの範囲」が制約になっています。AIは過去のデータをもとにパターンを学習するため、そもそもデータが存在しない領域では十分に機能しません。特に影響が大きいのが、希少疾患や特殊な身体条件といったエッジケースです。患者数が限られているうえ、データの公開や利用には倫理的・規制的な制約があり、AIが参照できる情報はどうしても不足します。さらに、医療データは施設ごとに分散し、形式も統一されていないため、活用のハードルが高いという問題もあります。
こうした状況では、モデルの精度をどれだけ高めても対応できる範囲には限界があります。つまり、医療AIを前に進めるには「データをどう増やすか」という視点が欠かせません。ここで発想を切り替え、「集める」以外の選択肢が必要になってきます。

「データを集める」から「データを作る」へ──デジタルツインの発想

Mantis Biotechが取り組んでいるのは、不足しているデータを生成によって補うというアプローチです。中核となる「デジタルツイン」は、人間の身体や動きを仮想空間上で再現するモデルであり、解剖学や生理学、行動の情報をもとに構築されます。単なる再現にとどまらず、実際の人体に近い状態をシミュレーションできる点が特徴です。
構築プロセスでは、教科書、モーションキャプチャ、生体センサー、トレーニングログ、医療画像といった多様なデータを取り込みます。そのうえでLLMがデータを整理・検証・統合し、最終的に物理エンジン(現実の力学や動きを再現する仕組み)によって人体の構造や動きを再現します。この物理エンジンの存在により、生成されるデータの現実性が担保されています。

この仕組みの強みは、実在しない条件のデータも作れる点にあります。例えば、指が欠損した状態の手の動きは公開データとしてほとんど存在しませんが、モデル上で特定の指を除去することで、その状態を再現したデータを生成できます。これにより、これまで扱えなかったケースにも対応できるようになります。
また、医療以外の分野でも活用が進んでおり、プロスポーツチームでは選手の動作データを蓄積し、パフォーマンスの変化を可視化する用途で使われています。例えば、ジャンプの状態が日々どのように変化しているかを、睡眠やトレーニング状況とあわせて分析することが可能です。こうしたデータの蓄積と分析は、将来的に怪我のリスク把握にもつながると考えられます。
データがないからできない、ではなく、必要なデータを自ら作る。この発想が、これまで手が届かなかった領域を現実的な検討対象へと変えつつあります。

まとめ

いかがだったでしょうか?
医療AIの課題は、モデルの性能ではなく、扱えるデータが不足している点にあります。Mantis Biotechは、その制約に対してデータを生成するという方法で向き合っています。デジタルツインは、実在するデータに依存せずに分析を行える手法であり、今後はデータを集めるだけでなく、必要に応じて作るという視点が重要になりそうです。