AIが5分で発見!次のCRISPR候補となる細菌防御システムとは
遺伝子編集技術として知られるCRISPRは、もともと細菌がウイルスから身を守るための仕組みです。そして今、その“元となる防御システム”が、まだ数多く見つかっていない可能性があるとされています。MITの研究チームはAIを活用し、従来は数ヶ月かかっていた探索をわずか数分で実現しました。その背景にある考え方を整理していきます。
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CRISPRの正体は「細菌の武器」だった|知られざる防御システムの全体像
CRISPRは遺伝子編集の代表例として知られていますが、本来は細菌がウイルスに対抗するための防御手段の一つです。細菌はファージと呼ばれるウイルスに日常的に攻撃されており、短期間で集団が大きく減少することもあります。こうした環境の中で、細菌は複数の防御の仕組みを進化させてきました。
その代表が、侵入したウイルスのDNAやRNAを切断する仕組みです。CRISPRは過去の感染情報を記録し、再び同じウイルスが侵入した際に一致する配列を狙って切断します。この「狙った場所を切る」という性質が、遺伝子編集への応用につながりました。

ただし、防御の方法はこれだけではありません。特定のDNA配列を切断する酵素や、感染をきっかけに細菌自身が死滅する仕組みなど、異なるアプローチが複数存在します。後者は感染の広がりを防ぐ役割を持ち、すでに制御機構として利用されています。
ここで重要なのは、こうした仕組みがすべて自然界に存在している点です。研究者はそれを設計しているのではなく、見つけて使い方を変えているに過ぎません。しかし、その「見つける」作業自体が難しく、多くの防御システムは未発見のまま残されてきました。この探索のボトルネックをどう突破するかが、次のテーマになります。
AIが探索を“数ヶ月→5分”に短縮|DefensePredictorの仕組み

これまで防御システムを探すには、ゲノムを解析し、関連しそうな遺伝子を一つずつ絞り込む必要がありました。特に、防御遺伝子は近くに集まる傾向があるため、その配置を手がかりにする方法が一般的でしたが、この前提に頼る限り、ゲノム上に分散した仕組みは見つけにくいままでした。
MITが開発したDefensePredictorは、この前提を外したアプローチを取っています。中核にあるのはESM-2というタンパク質言語モデルです。タンパク質は20種類の分子の並びで構成され、この並びが機能に関係しています。ESM-2はこの配列をデータとして学習し、未知のタンパク質の役割を推定します。
研究では、約1万7000の微生物ゲノムからデータを収集し、防御に関係するタンパク質とそうでないものを含めて学習させました。その結果、大腸菌の複数の株から600以上の新たな防御関連タンパク質が見つかり、その一部は実験で実際に防御効果を示しています。
特に注目すべきは、ゲノム上に散在しているにもかかわらず機能する可能性があるタンパク質まで検出できた点です。これまでの探索では前提としていた「まとまって存在する」という条件が崩れ、探索の範囲そのものが広がっています。
ここまでくると、見つかったものをどう活かすかが次の焦点になります。
見つかったのは“ツールの原石”|次のCRISPRが生まれる可能性
今回見つかったタンパク質は、現時点で用途が確立されているわけではありません。ただし、これまでの流れを見ると、防御システムが別の用途に転用されてきた事例はすでに存在します。
例えば、特定のDNAを切断する酵素は遺伝子導入に利用され、毒素と抗毒素のバランスで細胞の生死を制御する仕組みは、安全装置として応用されています。また、ZoryaやThoerisといった比較的新しいシステムは、細胞の状態を検知する仕組みとして研究が進められています。
今回の研究では対象を広げたことで、これまでにないタイプの防御タンパク質が多数見つかりました。さらに別の研究では、3万以上の細菌ゲノムから約240万の候補が予測されており、全体像はまだ見えていません。こうした多様な仕組みは、細菌の免疫がどのように進化してきたのかを理解する手がかりにもなるとされています。

ここからは推測ですが、こうした流れを見ると、新しい技術は一から設計するよりも、自然界に存在する仕組みを見つけて活用する形が主流になっていく可能性があります。今回の研究は、その候補が想定以上に広く存在していることを示しています。
まとめ

いかがだったでしょうか?
CRISPRは細菌が持つ防御機構の一つにすぎず、その背後にはまだ多様な仕組みが存在しています。AIの導入によって探索の前提が変わり、これまで見つかっていなかった領域にも手が届き始めました。自然界にある仕組みを見つけて活用する流れは、今後も続いていくと考えられます。今回の研究は、その可能性が現実的なものとして見え始めていることを示しています。