2026.05.20 | テクノロジー

PwCがClaudeを数十万人規模で導入!AI前提の業務設計へ

AIは業務を補助するツールから、企業の仕組みそのものへ入り込み始めています。PwCとAnthropicは、数十万人規模でClaudeを導入し、財務、人事、保険審査、M&Aまで見直す構想を発表しました。今回の提携からは、「AIを使う会社」ではなく、「AIを前提に業務を組み立てる会社」が現れ始めていることが見えてきます。

PwCとAnthropicは何を始めたのか

PwCAnthropicが発表したのは、単なるAIツール導入ではありません。AIを前提に、企業の業務構造そのものを見直す取り組みです。
PwCは今後、数十万人規模の社員へAnthropicのAI「Claude」を展開していく方針を示しました。対象となるのは、文章生成AIとして利用される通常のClaudeだけではなく、ソフトウェア開発を支援する「Claude Code」や、業務ソフト内でAIを利用できる「Claude Cowork」も含まれています。Claude Codeは、コード作成や修正、レビューなどを支援する仕組みです。一方のClaude Coworkは、スプレッドシートや文書作成ソフトの中でAIを直接利用できる機能で、日常業務の流れへ自然に組み込まれることを想定しています。

今回の発表で特徴的なのが、「AI-native」という考え方です。これは既存業務へAIを追加するのではなく、最初からAIが存在する前提で業務を設計するという意味で使われています。
象徴的な取り組みが、新設された「Office of the CFO」です。CFOは最高財務責任者を指し、企業の財務戦略を担う役割です。PwCはこの領域に特化した組織を立ち上げ、Claudeを活用した財務業務の見直しを進めると説明しています。対象となるのは、銀行、保険、医療など、高い正確性や監査性が求められる業界です。さらに両社は共同でCenter of Excellenceを設立し、3万人規模のPwC社員向けトレーニングも進める方針を明らかにしました。また、PwCはクライアントへ提供する前に、自社内でClaudeを実運用していることも説明しています。Anthropicの発表では、自社を「Customer Zero」と表現しており、まず自分たちで利用しながら運用方法を検証している状況が紹介されました。
AI関連では、試験導入やPoC段階の発表も少なくありません。PoCとは、導入可能性を確認するための小規模テストを指します。しかし今回の発表では、「試す」よりも「実際に業務で動かす」ことが強く意識されていました。その変化は、すでに現場の業務にも表れ始めています。

保険審査10週間→10日 AIが“仕事そのもの”を変え始めた

PwCとAnthropicの発表で印象的なのは、AI活用が構想段階に留まっていない点です。すでに実際の業務へ導入され、具体的な変化が出始めています。
代表例として紹介されたのが、保険引受業務です。保険引受とは、契約を受けるべきかを判断する審査業務を指します。契約内容やリスク、過去データなど、多くの情報確認が必要になるため、従来は長い時間を要していました。Anthropicの発表によると、その審査期間は10週間から10日間まで短縮されたとされています。処理速度が変わることで、従来は時間やコストの面で対応が難しかった案件にも取り組みやすくなる可能性があります。

サイバーセキュリティ領域でも変化が起きています。従来は数時間かかっていたインシデント対応が、数分単位で進められるようになったと説明されています。脆弱性の確認、コードレビュー、自動封じ込めなどをAIが支援していることも紹介されました。
ここで重要なのが、「agentic」という考え方です。これは、AIが単発の回答を返すだけではなく、複数の工程を連続して処理する仕組みを意味しています。例えば問題を検知したあとに、原因確認、関連コードの調査、対処方法の整理、被害拡大の防止までを、一連の流れとして進める形です。さらにPwCは、M&A領域でもAIを利用しています。企業買収では、大量の契約書や財務資料を確認する「デューデリジェンス」という工程があります。発表では、この確認作業へAIエージェントを活用していることが説明されました。
また、医療分野ではAdvocate Healthが16万7,000人規模でAI展開を進めていることも紹介されています。AI活用はIT企業だけではなく、医療や金融など、大量の確認業務を抱える業界へ広がり始めています。
今回の発表から見えてくるのは、「人がAIを使う」段階から、「AIが業務工程へ参加する」段階へ変わり始めていることです。AIは単独のツールではなく、企業の仕事の流れそのものへ入り込み始めています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
PwCとAnthropicの発表から見えてきたのは、AIが単なる業務支援ツールではなく、企業の仕事そのものへ入り込み始めている現状でした。保険審査やM&A、セキュリティ対応など、これまで人が長時間かけて進めていた工程へAIが組み込まれています。「AIを使う会社」ではなく、「AIを前提に業務を組み立てる会社」が少しずつ現れ始めています。今回の提携は、その変化が一部の実験ではなく、実際の現場で進み始めていることを示しているのかもしれません。