2026.05.23 | テクノロジー

SMBC・富士通・SoftBankの医療AI提携、その狙いとは?

SMBCグループ、富士通、SoftBankの3社が、健康・医療分野での業務提携を発表しました。医療データと健康データをAIで連携し、国産ヘルスケア基盤の構築を目指す今回の取り組みは、日本の医療や健康管理の形を変える動きとして注目されています。背景には、高齢化による医療費増加への課題があります。

日本の医療が抱える課題と「国産基盤」が必要になった背景

日本では高齢化が進み、65歳以上の人口はすでに全体の約30%に達しています。今後も医療や介護を必要とする人が増えることで、医療費の拡大や医療現場の負担増加が課題になると考えられています。救急医療や在宅医療、慢性疾患への継続対応など、医療機関に求められる役割も複雑化しています。
こうした状況の中で注目されているのが、医療データと健康データの活用です。医療データとは、診察履歴や検査結果、処方情報など病院で管理される情報を指します。一方、健康データは歩数や睡眠時間、体重、食事記録など、日常生活の中で取得されるデータです。

しかし現在、これらのデータはサービスごとに分散しています。病院、健康診断機関、スマートフォンアプリ、ウェアラブル端末など、それぞれ異なる形式で管理されているため、データ同士を連携しづらい状態が続いていました。医療データの標準化も発展途上であり、必要な情報を横断的に活用しにくいことが課題になっています。
SMBCグループ、富士通、SoftBankの3社は、この分断されたデータ環境を整理し、本人同意を前提に安全に連携できる「国産ヘルスケア基盤」の構築を目指しています。また、今回の発表で特徴的なのが、「国産」を前面に打ち出している点です。背景には、健康・医療データのような機微情報を海外基盤へ依存することへの懸念があります。
近年はAI活用が広がる一方で、データ主権(自国の重要データを自国内のルールや管理下で扱う考え方)や経済安全保障への関心も高まっています。今回の提携は、AI導入だけでなく、日本国内で安全に医療データを扱う環境整備を進めようとしている点が特徴です。そして、その基盤の上で、AIを活用した新しい医療支援の仕組みづくりも進められようとしています。

医療データ×AIで何が変わるのか 3社が描く新しい医療体験

今回の提携では、医療データと健康データを組み合わせ、AIを活用した健康支援の仕組みづくりが進められます。中心となるのが、利用者ごとに健康管理を支援する「AIエージェント」の提供です。AIエージェントとは、利用者の情報をもとに継続的なサポートを行うAIのことです。今回の構想では、日々の健康管理から医療機関の受診、治療後のフォローまでを一つの流れとして支援することが想定されています。
たとえば、歩数や睡眠時間、食事、服薬状況などの健康データをもとに、体調変化への気付きや生活習慣改善の提案を行う形です。SMBCグループ、富士通、SoftBankの発表によると、疾病リスクの把握や行動変容の支援にも取り組むとしており、重症化予防につながる可能性があります。

また、検査や投薬の重複、通院中断による症状悪化など、医療費増加につながる課題への対応も視野に入れられています。3社は将来的な医療費増加に対して、5兆円規模の費用抑制を目指す方針を示しています。ただし、これは現時点での構想を含む内容であり、具体的な成果時期などが決定しているわけではありません。
富士通は、医療データを扱うデータプラットフォーム構築や、医療機関向けAI開発を担当します。発表内で触れられているLLM「Takane」は、富士通とCohere Inc.が共同開発した大規模言語モデルです。大量の文章データを学習し、文章生成や要約などを行えるAI技術として、医療分野での活用が想定されています。
さらに今回の基盤は、「全国医療情報プラットフォーム」や「マイナポータル」など、公的基盤との連携可能性も視野に入れています。医療データ活用が病院内だけで完結するのではなく、社会全体のインフラへ広がろうとしている点も、今回の特徴の一つです。

医療・金融・通信の連携が意味するもの

今回の提携で特徴的なのは、医療企業だけではなく、金融と通信を含めた3社が共同で基盤づくりを進める点です。SMBCグループ、富士通、SoftBankは、それぞれ異なる利用者基盤や技術を持っており、それらを組み合わせることで、医療を日常生活の中へ広げようとしています。SMBCグループは、金融サービス「Olive」を中心に利用者接点を拡大しています。すでに2026年3月には、SoftBankとの提携による「Oliveヘルスケア」の提供も開始しています。今回の取り組みでは、医療機関での後払いサービスの普及に加え、健康と金融を組み合わせたサービス展開も視野に入れています。
一方、SoftBankは「LINE」「Yahoo! JAPAN」「PayPay」など大規模な利用者基盤を持っています。今回の提携では、それらのサービス基盤を活用しながら、ヘルスケア関連機能を一つのアプリ内で利用できる環境整備を進める方針です。

富士通は、医療データ管理やAI活用を支える役割を担います。加えて、ソブリンクラウドに関する知見も活用するとしています。ソブリンクラウドとは、データを国内ルールや国内管理下で運用することを重視したクラウド環境です。
今回の構想では、国産ヘルスケア基盤を国内データセンター上に構築すると明記されています。また、3社は将来的に6,000万人規模への利用拡大と、4,000の医療機関への導入を目指す方針も示しています。
病院の中だけで完結していた医療が、金融や通信サービスと結び付きながら、日常生活の中へ広がり始めている点は、今回の提携を理解するうえで重要なポイントと言えそうです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
SMBCグループ、富士通、SoftBankによる今回の提携は、単なる医療DXの取り組みではなく、日本国内で医療データをどう管理し、AIとどう結び付けていくのかを示す動きとして注目されています。医療、金融、通信が連携することで、健康管理は病院だけのものではなく、日常生活の中へ広がろうとしています。今後、国産ヘルスケア基盤がどこまで普及し、日本の医療環境にどのような変化を与えるのか注目です。