2026.05.28 | テクノロジー

日立がAnthropicと提携!Lumada 3.0とHMAXを強化

日立はAnthropicと提携し、生成AI「Claude」を活用したLumada 3.0の強化を発表しました。注目されているのは、AIをチャット用途に留めず、電力や鉄道、製造現場など実社会へ広げようとしている点です。AIは今、業務支援ツールから社会インフラを支える存在へ変わり始めています。

日立とAnthropicはなぜ提携したのか 背景にある「フィジカルAI」の拡大

生成AIはこれまで、文章作成や検索補助など、主にデジタル空間で活用されてきました。しかし現在は、工場設備や鉄道、電力インフラなど、実社会の運用と結び付く「フィジカルAI」への関心が高まっています。
フィジカルAIとは、現実世界の設備や機器、センサーなどと連携し、人の判断や作業を支援するAIを指します。例えば、設備異常の兆候検知や保守作業の優先順位整理、インフラ運用の支援などへの活用が想定されています。
こうした流れの中で、日立はAnthropicとの戦略的パートナーシップを発表しました。背景にあるのは、社会インフラ領域でAI活用を進める際、安全性や信頼性が重要になっていることです。

日立は110年以上にわたり、電力、交通、製造などの分野で事業を展開してきました。これらの領域では、小さなシステム障害でも社会全体へ影響を及ぼす可能性があります。そのため、「どれだけ高性能か」だけではなく、「安全に運用できるか」が重視されます。一方、Anthropicが提供する生成AI「Claude」は、推論能力に加え、安全性を重視した設計でも知られています。特に企業利用では、誤情報への対応や機密情報の扱いが重要になるため、インフラ領域との相性が注目されています。
日立の発表によると、今回の提携では、同社が持つOT(制御・運用技術)や現場データ、運用ノウハウと、ClaudeのAI技術を組み合わせることで、設備管理や運用支援の高度化を目指すとしています。また、金融や交通、電力など重要インフラ領域では、日立のセキュリティ専門組織「Cyber CoE」とAnthropicが連携し、サイバー攻撃への対応強化も進める方針です。
生成AIは今、「文章を作るAI」から、「現場を支えるAI」へ役割を広げ始めています。日立はこうした流れを踏まえ、自社全体でのAI活用にも踏み込みます。

日立グループ29万人へのClaude導入 “カスタマーゼロ”で進む業務改革

今回の発表で特に注目されているのが、日立グループ約29万人を対象に、生成AI「Claude」の活用を広げる取り組みです。多くの企業では、生成AIの利用は一部部署での試験運用に留まっています。一方、日立はソフトウェア開発だけでなく、営業、企画、コーポレート業務、保守運用まで含めた全ビジネスプロセスへの導入を進める方針を示しました。具体的には、コード生成や確認作業、障害対応、手順書作成などへの活用が挙げられています。加えて、バックオフィス業務や非エンジニア部門での利用も想定されており、生成AIの導入が「開発者向けツール」だけで終わらず、企業全体へ広がり始めている点は特徴のひとつです。

日立が重視しているのが、「カスタマーゼロ」という考え方です。これは、自社自身を最初の顧客として位置付け、実際の現場でAIを運用しながら課題や改善点を洗い出す取り組みを意味します。
生成AI分野では、PoC(概念実証)は成功しても、本格導入後に定着しないケースが少なくありません。現場ごとに業務内容や情報管理ルールが異なるためです。日立は、自社29万人規模で実運用を行うことで、実践的なノウハウを蓄積し、それを顧客向けサービスへ還元する考えです。さらに、10万人規模のAIプロフェッショナル人材育成も進めるとしています。ここでいうAI人材は、研究者やエンジニアだけではなく、営業や企画職も含め、日常業務の中でAIを活用できる人材を指しています。
生成AIは「導入するだけ」で成果が出る技術ではなく、業務へどう組み込むかが重要になります。日立は、自社で蓄積した運用ノウハウをもとに、次世代ソリューション「HMAX」の強化にもつなげようとしています。

Lumada 3.0とHMAXはどう変わるのか AIが社会インフラへ入り込む時代へ

日立は今回の提携を通じて、「Lumada 3.0」と「HMAX」の強化を進める方針を示しました。生成AIを単独で利用するのではなく、社会インフラ領域のデータや運用ノウハウと組み合わせる点が特徴です。
Lumadaは、日立が展開するデータ活用基盤で、工場設備や鉄道、電力インフラなどから収集したデータを分析し、業務改善や運用効率化につなげる取り組みです。一方、HMAXは、AIを活用して社会インフラ領域の課題解決を目指す次世代ソリューション群として位置付けられています。日立の発表によると、今回の提携ではAnthropicの「Claude」をHMAXへ取り込むことで、設備管理や保守運用の支援範囲を広げる考えです。

例えば、設備トラブル時には、大量の点検データやマニュアル、過去の障害履歴を確認する必要があります。従来は、熟練担当者が経験をもとに判断するケースも多くありました。生成AIを活用することで、関連情報の整理や異常兆候の抽出、対応候補の提示などを行いやすくなると説明されています。また、日立は自然言語による設備管理にも言及しています。自然言語とは、人が普段使う言葉のことです。「どの設備に異常があるか」といった文章ベースで設備状況を確認できる環境が想定されています。
加えて、日立は「Frontier AI Deployment Center」というグローバル組織も設立します。AnthropicのApplied AI担当者と、日立のIT・OT・セキュリティ専門家による共同チームを立ち上げ、将来的には300人規模まで拡大する計画です。
生成AI業界では、モデル性能だけでなく、「実際の現場で安全に運用できるか」が重要になりつつあります。今回の日立の取り組みは、AIが社会インフラ領域へ入り始めていることを示す事例のひとつと言えそうです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
日立とAnthropicの提携からは、生成AIがチャット用途だけでなく、社会インフラや現場運用へ広がり始めている流れが見えてきます。
特に今回は、AIモデルの性能競争ではなく、「実際の業務へどう組み込むか」に焦点が移っている点が印象的でした。今後は、AIを安全に運用しながら、現場で継続的に活用できる企業の取り組みに注目が集まりそうです。