AIはAIを作るのかAnthropicが示す3つの未来シナリオ解説
AIの進化は、便利なチャットツールの話だけでは語れなくなっています。Anthropicは、AIがAI開発そのものを支え、将来的には自ら後継システムを作る可能性に触れました。世界はどこへ向かうのか、同社が示した3つのシナリオから考えます。
ARCHETYP Staffingでは現在クリエイターを募集しています。
エンジニア、デザイナー、ディレクター以外に、生成AI人材など幅広い職種を募集していますのでぜひチェックしてみてください!
AIがAI開発を支え始めている
Anthropicの記事によると、AIは単に文章を作ったり、質問に答えたりするだけでなく、AI開発そのものにも関わり始めています。AIの開発では、コードを書く、実験を行う、結果を確認する、問題があれば修正する、といった作業が積み重なります。これまでは人間が中心となって進めてきましたが、AnthropicではClaudeのようなAIが、その一部を担う場面が増えています。
AIの役割は、段階的に変わってきました。2023年から2025年ごろのチャットボットは、短いコードを作ったり、作業の一部を助けたりする存在でした。2025年から2026年にかけては、コーディングエージェントとして、コードを書くだけでなく、ファイル全体を編集するような作業もできるようになりました。さらに現在は、自律エージェントとして、コードを直接実行したり、ほかのエージェントに長時間の作業を任せたりできる段階に入っていると説明されています。

ここで重要になるのが「再帰的自己改善」という考え方です。これは、AIが自分の後継となるAIを設計・開発し、そのAIがさらに次のAIを良くしていくような仕組みを指します。Anthropicは、まだその段階には達しておらず、必ず起こるとも述べていません。ただし、十分な計算能力が与えられ、現在の流れがさらに進めば、AIが自律的に後継システムを設計・開発する可能性があるとしています。
Anthropicの社内データも、その変化を示す材料として紹介されています。2026年5月時点で、同社のコードベースにマージされるコードの80%以上がClaudeによって作成されたとされています。また、2026年第2四半期には、一般的なエンジニアが2024年と比べて1日あたり8倍のコードをマージしていたとも説明されています。ただし、コード行数は品質をそのまま表すものではないため、単純に成果が8倍になったと見るのは正確ではありません。
外部のベンチマークでも、AIがより長いタスクを扱えるようになっている流れが示されています。たとえば、Claude Opus 3は人間が約4分で終えるソフトウェアタスクを扱える段階でしたが、その後のモデルでは、より長時間の作業にも対応できるようになったとされています。AIが実際の開発作業に深く関わるようになると、次に問われるのは、人間がどの役割を担うのかという点です。
人間の役割は「作る」から「判断する」へ移りつつある

AIがAI開発の作業を担う範囲が広がると、人間の役割も少しずつ変わっていきます。Anthropicの記事によると、最先端のモデルを作る仕事には、大きく分けてエンジニアリングと研究の2つがあります。エンジニアリングは、コードを書いたり、システムを整えたり、モデルのトレーニングを管理したりする作業です。研究は、どの実験を行うかを考え、結果を読み取り、次に試すアイデアを選ぶ作業を指します。
Claudeは、すでに細かく決められた作業を進める力を高めています。明確な実験を実行したり、コードを直したり、問題の原因を探したりする場面では、熟練した人間と同じか、それ以上の成果を出せる場合があるとされています。Anthropicの記事では、通常なら2〜3日かかる可能性がある複雑な不具合の調査を、Claudeが約2時間間で完了した例も紹介されています。AIは短い答えを返すだけでなくまとまった作業を進める存在になりつつあります。
一方で、Claudeにはまだ大きな課題があるとも述べられています。それは、何を目標にするべきかを選ぶ判断力です。与えられた目標に向かって作業を進めることと、そもそも取り組むべき問題を決めることは別の力です。たとえば、目の前の不具合を直すことはできても、次の四半期にチームが何を作るべきかを決めるには、技術だけでなく、目的、影響、優先順位を見極める必要があります。
Anthropicの調査では、Claudeが研究の次の一手を提案する能力も向上しているとされています。ただし、これはAIが人間の研究判断を完全に代替できるという意味ではありません。記事内でも、人間の強みは依然として全体像を把握し、目の前の課題の枠を超えて考える点にあるとされています。
また、AIが作業を進める量を増やすと、人間のレビューや意思決定が追いつかない場面も出てきます。作業全体の進みを遅くする部分は「ボトルネック」と呼ばれます。Anthropicでは、より多くのコードが出るようになった結果、人間によるコードレビューが新たなボトルネックになったとも説明されています。AIに任せられる作業が増えるほど、人間には「何を目指すのか」「どの結果を信じるのか」を見極める力がより求められます。この変化を踏まえると、Anthropicが示した未来の分岐も見えやすくなります。
Anthropicが示した3つの将来シナリオ
Anthropicは、AIの今後について、少なくとも3つの将来シナリオを示しています。ここで大切なのは、どれかひとつが必ず実現すると断定しているわけではない点です。AIの能力がどこまで伸びるのか、人間や社会がどのように対応するのかによって、向かう先は変わる可能性があります。
1つ目は、現在の伸びがどこかで停滞するシナリオです。AIの能力は短期間で大きく伸びていますが、今後はS字曲線のように伸びが緩やかになり、ある水準で落ち着く可能性があります。S字曲線とは、最初はゆっくり伸び、途中で大きく伸びたあと、最後は伸びが鈍くなる動きを表す考え方です。この場合でも、今あるAI機能が社会に広がるだけで、仕事やサイバー防御、組織のあり方には大きな変化が起こるとされています。

2つ目は、AI開発の効率が積み重なるように高まり続けるシナリオです。AIがコード作成や実験の実行を多く担い、人間が方向性を決める形が続けば、少人数の組織でも大きな成果を出せる可能性があります。一方で、作業の一部が速くなっても、人間のレビューや意思決定が追いつかなければ、そこが新たな詰まりになります。AIを使えばすべてが一気に進むわけではなく、組織がどこで詰まっているのかを見つけ、直していく力も問われます。
3つ目は、AIシステムが完全な再帰的自己改善の力を持ち、自ら後継システムを構築し始めるシナリオです。これは、AIが次のAIを作り、そのAIがさらに次のAIを改良していくような状態を指します。Anthropicは、この未来について確実に起こるとは述べていません。ただし、実現した場合には、人間がAI開発に関わる役割が大きく変わり、AIを監視し、安全性を検証する仕組みがより重要になるとしています。
あわせてAnthropicは、必要に応じてAI開発を遅らせたり、一時停止したりできる仕組みにも触れています。ただ止めるだけではなく、他の企業や国も本当に止めているのかを確認できることが重要だとされています。AIの未来はひとつに決まっているわけではありませんが、どの道を進むとしても、技術の進み方と安全性をどう両立させるかが大きな論点になります。
まとめ

いかがだったでしょうか?
Anthropicの記事から見えてくるのは、AIがただ作業を手伝うだけでなく、AIを開発する現場そのものにも入り始めているということです。
とはいえ、AIが自分で次のAIを作り続ける段階まで来ているわけではないので、これから先の未来も、ひとつに決まっているわけではなく、いくつかの可能性があります。
だからこそ大切なのは、「AIに何ができるのか」だけを見ることではなく、人間がどこで判断し、どのように安全性を確かめながら使っていくのかを考える必要があります。
Anthropicが示した3つのシナリオは、未来を予言するものではなく、AIとどう向き合っていくべきかを考えるためのヒントだといえます。
参考記事:AIが自らを構築するとき