JASRACが求めるAIと著作権の新ルールとは 創造のサイクルを守るために必要なこと
生成AIが音楽制作にも使われる中で、作品が学習に利用されることへの不安も広がっています。JASRACは、クリエイターが安心して創作を続けられる環境を守るため、著作権法の見直しを求めています。
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JASRACが著作権法第30条の4の改正を求める理由
JASRACが著作権法第30条の4の改正を求めている背景には、生成AIの開発に使われる学習データの扱いがあります。著作権法第30条の4とは、情報解析などを目的とする場合に、一定の条件のもとで著作物を利用できるとする規定です。生成AIの開発に向けた機械学習も、この規定との関係で、原則として権利者の許諾を得ずに行うことができるとされています。
課題は、作品を作った側が「自分の作品を利用してほしくない」と考えても、その意思を反映してもらう機会を持ちにくい点です。作詞者や作曲者、実演家、レコード会社などの権利者が、学習素材として使われるかどうかを事前に判断したり、事業者と交渉したりする場が十分に確保されていないことを、JASRACは問題視しています。
JASRACが2026年に実施した音楽クリエイター向けアンケートでは、生成AIに自分の作品が利用されることについて、「反対」「どちらかといえば反対」と答えたクリエイターが過半を占めました。

しかし、現行の著作権法第30条の4がある限り、事業者にはそうした声を聴く義務がないとされています。
JASRACは、人間の個性から生まれた著作物を、生成AIのための単なるデータとして扱うべきではないとしています。少なくとも、学習素材として利用されるかどうかを、クリエイターなどの権利者が選べる機会を設けるべきだという考えです。
著作権法第30条の4の改正を求める動きは、AIの利用を否定するものではありません。創作した人の意思をどう尊重し、作品が次の創作へつながる流れをどう守るのか。JASRACの主張を理解するには、次に示す「創造のサイクル」という考え方が重要になります。
創造のサイクルを守るためにJASRACが示す4つの視点

JASRACは、生成AIの開発や利用そのものを否定しているわけではありません。生成AIが創造のサイクルと調和する形で使われるなら、クリエイターや文化の発展にとって有益になり得るとしています。創造のサイクルとは、クリエイターが作品を生み出し、その作品が利用され、評価や対価が戻ることで、次の創作につながっていく流れのことです。
JASRACが示す1つ目の視点は、人間の創造性を尊重することです。人が時間をかけて生み出した著作物が、生成AIによって大規模に学習利用され、その結果として人間の作品に代わり得るAI生成物が大量に流通すれば、創作を続ける土台が弱まるおそれがあるとしています。
2つ目は、フリーライドへの懸念です。フリーライドとは、他者の努力や成果に十分な対価を払わずに利用する、いわゆる「ただ乗り」を指します。JASRACは、営利目的の生成AI開発に伴う著作物利用まで自由に認められるなら、クリエイターの努力や才能へのただ乗りを容認することになり、フェアではないとしています。
3つ目は、国際的な調和です。AIは国境を越えて利用されやすく、生成物やサービスも世界中に広がります。JASRACは、国際的な考え方やルールとの整合性を確保する必要があるとし、特に日本では、一定の条件のもとで、生成AIの学習に著作物を使うことが比較的広く認められています。一方で、G7(主要国首脳会議)の他の国では同じような法制度を採用していないため、JASRACは国際的なルールとのずれを懸念しています。
4つ目は、クリエイターの声を丁寧に聴くことです。生成AIに不安を抱く人がいる中で、その懸念を置き去りにせず、安心して創作に取り組める環境を整えることが、文化芸術やコンテンツの持続的な発展につながるとしています。
あわせてJASRACは、AIを利用した作品の取り扱いについてもガイドラインを定めています。人間の創作的寄与、つまり人が表現を選び、作品として形にした部分が認められるものは管理対象とする一方、シンプルな指示に基づいてAIが自律的に生成した歌詞や楽曲は管理しないとしています。
生成AIをめぐる議論では、便利さだけでなく、人が生み出した音楽をどう守り、次の創作へどうつなげるかが問われています。JASRACの考え方は、音楽とAIが共に存在するためのルールづくりに向けた問題提起だといえます。
まとめ

いかがだったでしょうか?
今回のJASRACの発表を読んで、生成AIの利用を止めたいという話ではなく、クリエイターの意思や権利が置き去りにされない仕組みを整えることが大切なのだと感じました。
新しい音楽との出会いをこれからも続けるためには、AIの便利さと創作への敬意を両立させる視点が欠かせないですね。
これからも、作り手が安心して音楽を生み出し、聴く側も素敵な音楽に出会える環境が続いてほしいです。