2026.07.08 | テクノロジー

MetaのBrain2Qwerty v2とは脳活動から文章を復元するAI研究


Metaは、外科手術を伴わずに脳活動から文章を復元するAIモデル「Brain2Qwerty v2」を発表しました。脳磁図で記録した信号をもとに、タイピング中の自然文を復号する非侵襲型BCI研究として注目されています。


Brain2Qwerty v2は、脳活動から文章を復元する非侵襲型BCI

Metaが発表した「Brain2Qwerty v2」は、脳活動から文章を復元するAIモデルです。将来的には、脳損傷で話す能力を失った人のコミュニケーション支援につながる可能性がある研究として紹介されています。
ブレイン・コンピューター・インターフェース、いわゆるBCIは、脳の信号を読み取り、コンピューターの操作や文字入力などにつなげる技術です。現在、高性能なBCIの多くは、脳内や脳表面に電極を埋め込む外科手術を必要とします。一方で、Brain2Qwerty v2は脳にインプラントを埋め込まず、外部装置で脳活動を記録する点に特徴があります。
Brain2Qwerty v2で使われているのは、脳磁図と呼ばれるMEGです。MEGは、脳の活動によって生じるごく弱い磁場を外から測定する装置で、体の外から脳活動を記録できるため、外科手術を伴わない「非侵襲

型」の方法として位置づけられます。
研究では、9人の健康なボランティアがそれぞれ10時間、MEG装置を装着して文章をタイピングしました。Metaはこのデータから約2万2000文を収集し、Brain2Qwerty v2を学習させています。つまり、モデルは人が文章を記憶し、タイピングしている最中の脳活動をもとに、対応する文章を復元するように訓練されています。
Brain2Qwerty v2は、2025年に発表されたBrain2Qwerty v1を発展させたモデルです。v1は、MEGで記録した脳活動からキー入力を予測する研究でしたが、各キーが押されたタイミング情報を必要としたため、リアルタイムでの動作には向いていませんでした。v2ではこの制約を緩和し、連続した脳活動の記録から直接文章を生成する方向へ進んでいます。
ここで大切なのは、Brain2Qwerty v2が「頭の中の考えを何でも読み取るAI」ではないという点です。今回の研究は、健康な参加者が文章を記憶し、タイピングしているときの脳活動から、対応する文章を復元するものです。外科手術を伴わないBCIの可能性を示す研究ですが、実際にどの程度使えるのかは、精度や装置面の課題とあわせて見る必要があります。

平均61%の単語正解率と、日常利用に向けた課題

Brain2Qwerty v2は、MEGで記録した脳活動から自然な文章を復元する研究として、一定の成果を示しています。Metaによると、平均61%の単語正解率を達成し、最も精度の高い参加者では78%に達しました。さらに、最良の参加者では、半数以上の文を「単語の誤りが1語以下」の範囲で復号できたとされています。
Brain2Qwerty v2では、脳活動の信号から文章を復元するために、深層学習を使った処理の流れが採用されています。深層学習とは、大量のデータから特徴を学習し、入力に対して適切な出力を予測するAI技術の一つです。今回の研究では、脳活動の記録から文字、単語、文章を段階的に復元し、意味のある自然文に近づける構成になっています。また、大規模言語モデル、いわゆるLLMも活用されています。

LLMとは、大量の文章データから言葉のつながりを学習したAIモデルのことです。Brain2Qwerty v2では、脳信号だけでなく、文章として自然につながるかどうかも手がかりにしながら復元を行います。脳活動の信号をそのまま文字に置き換えるのではなく、言葉として自然に成立するかも見ながら文章を組み立てている点が、この研究の重要な部分です。
一方で、Metaは実用化には大きな課題が残るとも説明しています。現時点の復号性能は日常利用にはまだ不十分で、単語や文字の誤りが多いとされています。平均61%という数字は研究として重要な成果ですが、会話支援として安心して使うには、さらに高い精度が必要です。
装置面にも課題があります。今回使われたMEGは、外科手術を伴わずに脳活動を記録できる一方で、大型のスキャナーを必要とします。そのため、多くの患者が日常的に使える環境にはまだありません。ただし、MetaはMEGセンサーの小型化やウェアラブル化が進んでいることにも触れており、将来的には臨床現場で使いやすくなる可能性があるとしています。
Brain2Qwerty v2は、臨床利用や製品化に直結する段階ではありません。それでも、学習データが増えるほど復号性能が向上する傾向があり、現時点では性能向上が頭打ちになる兆候は見られていないとMetaは説明しています。外科手術を伴わないBCIが、話すことが難しい人のコミュニケーション支援にどう近づいていくのか、今後の研究が注目されます。

まとめ


いかがだったでしょうか?
Brain2Qwerty v2の発表を見て、脳活動から文章を復元する研究がここまで進んでいることに驚きました。
外科手術を伴わずに文章を復元できる可能性がある一方で、精度やMEG装置の大きさなど、日常的に使うにはまだ課題があることも分かります。
すぐに実用化される技術ではありませんが、話すことが難しい人のコミュニケーションを支える選択肢として、今後の研究に期待したいと感じました。