2026.07.27 | テクノロジー

GoogleのGemini新モデル3種 性能・速度・安全性を解説

Googleは、新たなAIモデル「Gemini 3.6 Flash」「Gemini 3.5 Flash-Lite」「Gemini 3.5 Flash Cyber」を公開しました。処理の速さやコストが見直され、業務でAIを使う人々にとって身近な変化となりそうです。3つのモデルが何を変えるのか、順に見ていきます。

Gemini 3.6 Flashが示す、処理効率と性能の両立

Gemini 3.6 Flashは、Gemini 3.5 Flashに対する開発者や利用者からのフィードバックをもとに開発されたモデルです。AIが文章を生成する際に使う処理単位を「トークン」と呼びますが、Artificial Analysis Indexの調査によると、3.6 Flashは3.5 Flashに比べて出力トークンの使用量を17%削減しており、料金も入力100万トークンあたり1.50ドル、出力100万トークンあたり7.50ドルと、3.5 Flashより低価格に設定されました。
性能面でも複数の指標で向上が見られます。コーディング能力を評価するDeepSWEではスコアが37%から49%に上昇し、機械学習研究に関する能力を評価するMLE Benchでも、スコアが49.7%から63.9%に伸びました。

パソコン上の操作能力を評価するOSWorld-Verifiedでは78.4%から83.0%に向上しました。パソコン操作機能は、Gemini APIとGemini Enterpriseでクライアント側の組み込みツールとして利用できます。
さらに、知識労働に関する能力を評価するGDPval-AA v2でも、スコアが1349から1421に伸びており、Hebbia社やHarvey社は文書の読み取りやレポート作成といった作業で3.6 Flashの能力を評価していると報告されています。加えて、化学・生物・放射線・核に関する悪用や、サイバー攻撃への悪用を防ぐため、安全対策も強化されました。
特定の能力だけでなく、処理効率から安全性まで総合的に強化された点が、3.6 Flashの大きな特徴といえます。

Gemini 3.5 Flash-Liteで実現する、速度とコストの最適化

Gemini 3.5 Flash-Liteは、Gemini 3.5シリーズの中で最も処理速度が速いモデルです。Artificial Analysisの調査によると1秒あたり350トークンを出力できるとされ、料金も入力100万トークンあたり0.3ドル、出力100万トークンあたり2.5ドルと、前世代のGemini 3.1 Flash-Liteより品質が向上した点と合わせて、コストと性能のバランスに優れたモデルとなっています。エージェントによる検索や文書処理など、応答の速さに加えて、多くの処理を継続的に実行する必要がある用途を想定して設計されています。
このモデルには「思考レベル」という設定があり、AIが回答を出す前にどの程度深く考えるかを用途に応じて調整できます。

大量の作業を低コスト・低遅延で処理したい場合は思考レベルを低く、複数のサブエージェントが段階的に処理する作業では、より高く設定するといった使い方ができます。また、パソコン上の操作を支援するcomputer use機能も、組み込みツールとして利用可能です。
性能面では、ターミナル環境でのコーディング能力を評価するTerminal-Bench 2.1で31%から54%に上昇し、長い文脈を処理する能力を評価するGDM-MRCR v2でも60.1%から72.2%に向上しています。実際の作業遂行能力を評価するGDPval-AA v2も642から1140に伸びました。SWE-Bench ProやOSWorld-Verifiedといった評価では上位モデルであるGemini 3 Flashを上回る結果も報告されています。商品データから特徴を抽出する作業や、レシートの翻訳・要約などにも活用例が示されており、速度だけでなく実務能力の高さもうかがえます。
処理量や求める精度に応じて思考レベルを調整できる点は、コストを抑えながらAIを運用するうえで有効な選択肢といえます。

Gemini 3.5 Flash Cyberが支える、脆弱性への対応

近年、AIモデルがソフトウェアの脆弱性を発見する速度は、現在のシステムが脆弱性を修正する速度を上回るようになってきました。この状況に対応するため、Googleは、ソフトウェアの脆弱性の発見と修正に特化したGemini 3.5 Flash Cyberを公開しました。3.5 Flashをもとに調整されており、大規模なモデルよりも低い処理コストで運用できる点が特徴です。Flashシリーズの性能と処理効率を生かし、コード上の問題を大規模に検出・検証・修正するための基盤として設計されています。
このモデルは、コードのセキュリティ問題を検出・修正するエージェントであるCodeMenderと組み合わせて運用されます。

CodeMenderの中では、複数の3.5 Flash Cyberが並行して作業を行い、その内容を1つのレポートにまとめる仕組みが採用されています。また、セキュリティ分野のベンチマークであるCyberGymでも、最先端モデルと競合する水準の成績を示しました。
一方で、脆弱性を発見する技術は防御にも攻撃にも使える性質を持っています。こうした背景を踏まえ、Gemini 3.5 Flash Cyberは一般提供を行わず、政府機関と信頼できるパートナーに限定し、CodeMenderを通じたアクセス制限付きの試験プログラムとして近日提供される予定です。防御を担う側が、重大な脆弱性を悪用される前に発見・修正できるようにすると同時に、技術が広く悪用されるリスクを抑えることが狙いです。高性能なAIを防御へ活用しながら、その提供範囲を慎重に管理する姿勢は、今後のAI活用において重要な視点といえます。

まとめ

いかがだったでしょうか?
Gemini 3.6 Flash、Gemini 3.5 Flash-Lite、Gemini 3.5 Flash Cyberは、それぞれ性能と処理効率、速度とコスト、脆弱性対応に重点を置いたモデルです。3つを比較すると、AIモデルは性能の高さだけでなく、処理速度やコスト、安全性など、用途に応じた基準で選ぶことが重要だとわかります。業務で活用する際は、何を優先するのかを整理したうえでモデルを選ぶことが、適切な運用につながるといえます。