2026.07.29 | テクノロジー

「やどチャット」とは?宿泊施設向けAIの特徴を紹介

宿泊施設では、チェックイン時間や駐車場の案内など、日々多くの問い合わせに対応しています。一方、営業時間外の問い合わせやAIによる誤回答への不安から、効率化を進めにくいという課題もありました。そこで提供が始まったのが、宿泊施設向けAIチャットボット「やどチャット」です。本記事では、開発の背景と、安全性を重視した仕組みについて分かりやすくご紹介します。

宿泊施設の問い合わせ対応に残る3つの課題と「やどチャット」の開発背景

宿泊施設の問い合わせ対応には、今も解決しきれていない課題があります。
1つ目は、同じ質問への繰り返し対応です。チェックインやチェックアウトの時間、駐車場の有無、最寄り駅からのアクセスなど、似た内容の問い合わせが日々寄せられます。1件ごとの対応は短時間でも、件数が増えれば現場にとって大きな負担になります。
2つ目は、営業時間外に生まれる予約機会の損失です。宿泊先の比較や予約は、夜間や休日に行われることもあります。問い合わせにすぐ回答できなければ、疑問や不安が解消されないまま、別の施設を選ばれる可能性があります。宿泊者のなかには、追加料金やキャンセル条件、ペットやアレルギーへの対応、深夜のチェックイン、部屋の音や段差などを、スタッフへ直接尋ねにくいと感じる人もいます。

質問できないまま予約を見送られた場合、施設側は離脱の理由を把握しにくく、表面には見えない機会損失につながります。
3つ目は、AIによる誤回答への不安です。AIが事実に基づかない情報を、正しい内容のように生成する現象は「ハルシネーション」と呼ばれます。料金やキャンセル規定、チェックイン方法などを誤って案内すれば、クレームや施設への信頼低下につながるおそれがあるため、AIの導入をためらう施設もありました。
「やどチャット」は、こうした課題に対応するため、株式会社リトラが提供を開始した宿泊施設向けAIチャットボットです。旅館やホテル、貸別荘、民泊、ペンション、ゲストハウスなど、幅広い宿泊施設を対象としており、AIシステムやAIエージェントの開発を手がける株式会社Dreseoと共同で開発されています。
リトラは以前から、宿泊施設の問い合わせや予約メッセージへの対応を代行してきました。そこで蓄積した回答パターンや、人へ引き継ぐべき問い合わせの判断基準を取り入れ、まずは自社の代行業務で「やどチャット」を運用しています。その結果、一次返信までの時間が短縮され、担当者が確認や判断を必要とする業務に集中しやすくなったと説明しています。こうした現場での経験をもとに、問い合わせの内容に応じてAIと人を使い分ける仕組みが整えられました。

AIだけに任せない「3層ハイブリッド設計」と安全性を重視した仕組み

「やどチャット」は、すべての問い合わせをAIだけで処理するのではなく、質問の内容に応じて対応方法を切り替える「3層ハイブリッド設計」を採用しています。よくある質問には選択式FAQ、自由入力された質問にはAI、判断が難しい場合には人が対応することで、速さと安全性の両立を図っています。
チェックイン時間や駐車場、アクセスなど、定型的な質問にはボタン形式のFAQメニューで回答します。あらかじめ設定された内容を表示するため、AIによる文章生成を行わず、1秒以内に回答できるとされています。宿泊者は必要な情報をすぐに確認でき、施設側も定型的な問い合わせへの対応負担を軽減できます。

一方、宿泊者が文章で質問した場合は、RAGを使ったAI応答へ切り替わります。RAGとは、あらかじめ登録された情報を検索し、その内容をもとに回答を生成する仕組みです。「やどチャット」では、施設ごとのナレッジを参照し、出典付きで回答を生成します。根拠となる情報を確認できない場合は推測で答えず、有人対応へ切り替える設計です。
AIだけでは安全に判断できない質問は、有人エスカレーションによって担当者へ引き継がれます。通知には、これまでの会話の要約や回答できなかった理由、参照した情報が添えられるため、担当者はそれまでの経緯を把握しやすく、スムーズに対応を引き継げます。特に、料金やキャンセル、チェックインなど、案内を誤るとトラブルにつながりやすい質問には、専用の制御が設けられています。
また、「事故ゼロ、業務削減、CVR向上」の順に優先する方針を掲げており、予約数を増やすことよりも、誤った案内を防ぐことを重視しています。電話番号やクレジットカード情報などの個人情報は、ログに保存しない処理が行われます。公式ホームページの予約前チャットなど、複数のチャネルに対応しています。また、日本語をはじめ、英語・中国語・韓国語など100言語以上で利用できる点も特徴です。AIが対応できる範囲と人が対応する場面を明確に分けることで、安全性と運用のしやすさを両立した仕組みとなっています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
「やどチャット」は、問い合わせ対応をすべてAIに任せるのではなく、必要に応じて人へ引き継ぐ仕組みが特徴的だと感じました。
特に、根拠を確認できない内容には推測で答えず、安全性を優先している点は、宿泊施設でも導入を検討しやすいポイントだと思います。
業務の負担を減らしながら、宿泊者が時間を気にせず質問できる環境を整えられるサービスとして、今後の活用が注目されそうですね。