2026.08.16 | テクノロジー

NEC「コーポレートAI・Workforce部門」始動 AI組織を解説

AIを業務の一部で使うだけでなく、AIそのものが組織の一員として仕事を進める――そんな働き方が現実になり始めています。NECは2026年8月、人とAIの共創を検証する「コーポレートAI・Workforce部門」を新設しました。AIが部門長から社員までを担う組織は、どのように動くのでしょうか。その仕組みを見ていきます。

NECが新設した「AIだけで構成する組織」とは

NECは2026年8月1日付で、人とAIの共創を実践する社内組織「コーポレートAI・Workforce部門」を新設しました。特徴は、部門長から社員まで、組織内の役割をAIが担う点です。NECによると、職務定義から業務の実行、自己進化までをAIが自律的に行い、人が品質とガバナンスを統制する組織は、発表日時点で、従業員数万人規模の国内企業を対象とした同社調べでは初の取り組みとしています。
組織は「AI部門長」「AIボード」「AIマネージャー」「AI社員」の4階層で構成されています。AI部門長は組織全体の稼働状況を把握・管理し、AIボードは経営の視点から組織の状態を評価。AIマネージャーは品質やコストなどの観点から業務を管理し、AI社員が実際のタスクを担当します。
AI社員は、あらかじめ固定されているわけではありません。社内で業務のニーズが生じると、AIマネージャーが必要なAI社員を生成して役割を与えます。

生成されたAI社員には、NECの「Code of Values」やパーパス、行動規範、社内規定などを、業務を進めるうえでの知識や判断基準として組み込みます。さらに、各AIは不足しているスキルを自ら学習し、継続的に更新していく仕組みです。
ただし、すべてをAIだけで完結させるわけではありません。最終的な評価や意思決定、品質・ガバナンスの統制は人が担います。
また、AIボードとAIマネージャーがAIの生成や稼働、改善をまとめて管理することで、部門や利用者ごとにAIエージェントが個別に構築・運用されることを抑える仕組みも設けています。AIに関する知識やノウハウを個人にとどめず、組織全体に蓄積していくことも狙いの一つです。
特に注目したいのは、AIを個別業務の効率化に使うだけでなく、役割分担や管理の仕組みまで含めて組織として設計している点です。AI活用を個人や一部の業務にとどめず、組織全体で運用するための仕組みづくりまで踏み込んでいるところに、この取り組みの特徴があります。
では、こうしたAI組織は実際の業務でどのように動き、人はどのような役割を担うのでしょうか。

NECが検証する、人とAIの新しい役割分担

NECは「コーポレートAI・Workforce部門」の正式な設立に先立ち、2026年7月から1カ月間の社内実証を行いました。実証では、役員会議で使う経営分析やシミュレーション、リスクの予兆検知までをAIが一貫して担当しています。NECによると、その結果、対象業務にかかる時間は約7分の1となり、人はほかの、より高度な業務に時間を使えるようになったとしています。
NECが掲げているのは、AIによって人の仕事を単純に置き換える考え方ではありません。AIを人の能力を広げる「増力」と位置づけ、AIが業務の遂行を担う一方で、人は最終的な判断や変革の実行など、AIだけでは担えない領域に集中する考え方です。

AI組織には、自ら仕事の進め方を改善する仕組みもあります。週次のサーベイを通じてAI社員から業務上の課題や改善案を集め、AIボードが内容を審議します。AI組織内で対応できる課題は人の手を介さずに改善し、データや権限、ナレッジ、コンテキストなど、人による整備が必要な場合はリクエストとして提示します。
さらに、AIの活動はデジタルツイン上に構築された「AI統合マネジメントコックピット」でリアルタイムに可視化されます。NECはAI同士のコミュニケーションを可視化し、業務の過程を追跡できる状態にすることで、透明性やトレーサビリティの確保も進めています。
NECは一連の取り組みを「組織としてのAIキャピタル活用の実証」と位置づけています。AIキャピタルとは、AIを企業や組織が活用する資本の一つとして捉える考え方です。NECでは、変革の「創造」を担う人的資本と、変革の「加速」を担うAI資本をどのように配分するかを自社で検証しています。
実証の場となるのは、約10万人の従業員を擁するNECグループです。NECは自社を最初の利用者とする「クライアントゼロ」として、ガバナンスや品質管理、知見の蓄積方法などを検証し、そこで得た仕組みや方法論、基盤、運用ノウハウを、価値創造モデル「BluStellar」を通じてさまざまな企業や組織へ提供していく方針です。
AIを業務の補助に使うだけでなく、人とAIの役割そのものを組織単位で見直す――NECは実際の組織運営を通じて、人とAIがどのように共に働けるのかを検証しています。
AIの自律性を高める一方で、人による意思決定やガバナンスを組み込んでいる点は、企業がAI活用を広げるうえで重要なポイントになりそうです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
NECが新設した「コーポレートAI・Workforce部門」では、AIが業務を担い、人が最終的な意思決定や品質、ガバナンスを統制します。
今回の取り組みは、AIを単なる業務支援ツールとして使う段階から、人とAIの役割そのものを組織単位で設計する段階へ踏み込んだ事例といえます。
今後、企業がAI活用を広げていくうえでは、AIにどこまで業務を任せるのかだけでなく、人がどの領域で判断や統制を担うのかをあわせて設計することが重要な論点です。NECの実証からは、人とAIが共に働く組織を考えるうえで、業務の自動化だけでなく、役割分担やガバナンスまで含めて設計することの重要性が見えてきます。