2026.08.24 | テクノロジー

Alexa for Shoppingとは?会話型AIで変わる商品検索

Amazonで商品を探すとき、これまでは検索バーにキーワードを入力するのが一般的でした。Amazonは現在、会話型AI「Alexa for Shopping」を通じて、自然な言葉で質問したり、画像をもとに提案を受けたりできる買い物体験を広げています。数億点の商品を扱うAmazonが、なぜ会話型AIに注目するのか。背景と活用例を紹介します。

検索バーだけでは探しにくい?Amazonが会話型AIに注目する理由

Amazon Worldwide StoresのCEOを務めるDoug Herrington氏は、自身のオフィスに1910年ごろのSears and Roebuckのカタログを置いています。約2万点の商品が掲載され、衣料品や消耗品だけでなく、住宅まで注文できたといいます。
Herrington氏がこのカタログを引き合いに出すのは、小売の仕組みには扱える商品数に限界があることを示すためです。2万点の商品を冊子で紹介できても、10万点、20万点と増えていけば、巨大なカタログを顧客に送り、その中から目的の商品を探してもらう方法では対応しにくくなります。
Amazonのオンラインストアは、紙のカタログでは難しかった品ぞろえの拡大を可能にし、数億点の商品を扱える規模まで成長しました。

しかしHerrington氏は、品ぞろえが増え続けるなかで、検索バーと検索結果を中心とした仕組みにも限界があると考えています。数多くの選択肢から一人ひとりに合う商品を見つけてもらうには、新しい技術が必要になったと語っています。
そこでAmazonが商品探しに取り入れているのが、会話型AIを活用した「Alexa for Shopping」です。Herrington氏は、カタログから検索バーへと商品探しの方法が変わったように、会話型AIも小売における次の形式になり得ると捉えています。
Alexa for Shoppingの事例からは、AIの役割が「検索結果を返す」ことから「利用者の意図をくみ取り、選択肢を整理する」ことへ広がっていることが分かります。商品数が多いサービスほど、こうした支援の価値は高まりそうです。
では、Alexa for Shoppingによって、従来の商品検索から実際の探し方はどのように変わるのでしょうか。

商品を並べるだけではない。「Alexa for Shopping」で変わる商品探し

Alexa for Shoppingの特徴は、検索結果を並べるだけでなく、利用者が入力した内容に応じて直接回答しながら商品探しを支援する点にあります。AmazonでConversational Shopping担当VPを務めるRajiv Mehta氏は、Amazonの利用者はこれまで、検索に適した言葉を考えながらストアを利用してきたと説明しています。今後は入力できる内容の幅を広げ、思いついたことをそのまま尋ねられるようにする考えです。
たとえばAmazonの検索バーに「私の単3電池はどこ?」と入力すると、電池の商品一覧ではなく、以前注文した電池について「本日午後5時までに到着予定」といった形で回答します。また、「通常のコーヒーメーカーとコールドブリューメーカーは何が違う?」と尋ねると、違いを説明するとともに、利用者に合わせた商品も提案します。

Amazonの記事では、小さなアパートに住んでいることを踏まえてコンパクトな商品を示したり、1杯用のコールドブリューメーカーを閲覧していたことを考慮したりする例が紹介されています。
文字だけでなく、画像を使った質問にも対応します。Herrington氏は、自宅の冷蔵庫を撮影し、その写真をもとに1週間分の食料品を提案するよう依頼しました。Alexa for Shoppingは写真の内容をもとに、2人分の料理をしていることや生鮮食品を好む傾向を推測し、たんぱく質源や果物、野菜などを含む買い物リストを作成したといいます。
Mehta氏も、息子が約200冊の本が並ぶ2つの本棚を撮影し、「次に何を読めばいい?」と尋ねた例を紹介しています。Alexa for Shoppingは本人の興味を踏まえてスポーツ関連の本を提案し、NFLシーズンが近づいていることも考慮したといいます。
検索用のキーワードを考えて商品一覧から探すだけでなく、質問や画像を起点に必要な情報や候補へ近づけることが、Alexa for Shoppingの現在の特徴です。Amazonは、こうした仕組みをさらに広げた先に、買い物そのものの形が変わる可能性を見ています。
これまでの商品検索では、利用者が検索システムに合わせて言葉を選ぶ必要がありました。Alexa for Shoppingは、その関係を逆転させ、システム側が利用者の自然な問いに合わせる方向へ商品探しを変えようとしている点が特徴的です。

「世界中の商品」から自分に合うものを。Amazonが描く買い物の未来

Herrington氏は、会話型AIによって、従来よりもはるかに多くの商品を扱いながら、一人ひとりの要望に応じた商品探しができる可能性があると考えています。従来の検索バーと検索結果では、品ぞろえを10倍に増やした場合、膨大な候補を確認しながら目的の商品を探すことが難しくなるという見方です。
Herrington氏は、その考えを「靴下」を例に説明しています。必要な靴下の条件や好みは人によって異なりますが、会話を通じて希望を伝えられれば、世界中のさまざまな靴下を扱っていたとしても、大量の商品を一つずつ確認せずに自分に合う候補を探せる可能性があります。こうした仕組みによって、品ぞろえそのものをさらに広げることも目指せるとしています。

Amazonが想定している利用場面も、現在の検索画面に限りません。Herrington氏とMehta氏は、キッチンや車内、テレビを見ているときなど、さまざまな場所でAlexa for Shoppingとやり取りする未来を語っています。質問の内容も単なる商品検索にとどまらず、生活の中で生まれるさまざまな問いへ広がる可能性が示されています
Herrington氏はさらに、5年後には「家が普段使う日用品を自ら再注文する」ことさえ当たり前になっているかもしれないと述べています。一方で、未来が具体的にどのような形になるかは分からないとも話しており、現時点では将来像の一つとして示されたものです。
Alexa for Shoppingが広がれば、変わるのは商品を探す方法だけではないかもしれません。必要なものを思いついた場所で尋ねたり、日用品の購入を仕組みに任せたりと、買い物を始めるタイミングや場所そのものが変わっていく可能性があります。

まとめ

いかがだったでしょうか?
Amazonは「Alexa for Shopping」を通じて、自然な会話や画像を使って商品を探せる買い物体験を広げています。現在は注文状況の確認や商品比較、画像をもとにした提案などが紹介されており、将来的にはキッチンや車内など、さまざまな場所でAIとやり取りしながら買い物をする可能性も示されています。
Alexa for Shoppingの取り組みからは、会話型AIが商品検索を便利にするだけでなく、利用者が商品と出会うまでの流れそのものを変える可能性が見えてきます。ECにおいて「何を売るか」だけでなく、「どう見つけてもらうか」の設計が、これまで以上に重要になっていきそうです。