パナソニック、ハイパースペクトル対応の高精度AI検査ソフトを発売
パナソニックは、ハイパースペクトルカメラと連携するAI検査ソフトNTシリーズ「AG-HSS10」を2026年10月上旬に発売します。人の眼やRGBカメラでは見分けにくい違いをAIで判別できるのが特徴です。少ないデータでの学習や高精度な検査をどのような仕組みで実現するのか、想定される活用例とともに紹介します。
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人の眼では見えない違いを捉えるハイパースペクトル×AI検査とは
製造現場では、品質向上や省人化、生産効率の改善を目的に、カメラで取得した画像をコンピューターで解析し、良品・不良品の判定や識別などに利用する「マシンビジョン」を使った自動検査システムの導入が進んでいます。
ただし、一般的なRGBカメラは、人の眼で見える色情報をもとに対象物を捉えるため、素材や状態によっては十分に違いを判別できない場合があります。そこで期待されているのが、ハイパースペクトルカメラです。
ハイパースペクトルカメラは、人の眼では識別しにくい細かな色の違いを「スペクトルデータ」として取得できます。スペクトルデータとは、対象物から得られる光を波長ごとに捉えた情報のことで、通常の画像では見分けにくい素材や状態の違いを分析する手がかりになります。
一方で、詳細なスペクトルデータを取得できても、それを実際の検査に活用するには専門的な知識が必要であり、産業現場で導入・活用するうえでの課題となっていました。
パナソニックのAI検査ソフトNTシリーズ「AG-HSS10」は、同社のハイパースペクトルカメラ「AG-HSV10M」で取得したスペクトルデータと、独自のAI検査技術を組み合わせた製品です。「AG-HSV10M」と接続することで、画像の取得からAIによる学習・判別までを一連のシステムとして提供し、一般的な画像検査で使われる形状認識にスペクトルデータによる判別を加えることで、従来の画像検査では難しかった異物検出や品質判定などに対応します。
ハイパースペクトルカメラは多くの情報を取得できても、それを現場で扱える形にできなければ十分な活用にはつながりません。スペクトルデータの取得からAIによる判別までを一連の仕組みにすることで、これまで専門知識が必要だった情報を、実際の検査判断に使える形へ変えている点に「AG-HSS10」の価値があります。
では、少ないデータからどのようにAIを学習させ、検査につなげるのでしょうか。
少ないデータで高精度に判別する「AG-HSS10」の仕組みと活用例

「AG-HSS10」は、AIモデルを作成する「NT-Train」と、作成したAIモデルにもとづいて検査・判定を行う「NT-1」で構成されています。両ソフトには、パナソニックが2017年から開発してきたAI検査技術が採用されています。このAI検査技術は、2023年時点で国内15拠点の工場に導入され、品質向上への活用を通じて進化してきました。
NT-Trainでは、独自技術「チョップドラーニング」により、1枚の画像から良品・不良品の箇所を細かく切り出し、複数の学習データを生成します。一般的なAI学習ソフトでは多くの画像データと学習時間が必要になるのに対し、少ない画像でも効率的かつ短時間でAIモデルを作成できるのが特徴です。
さらに、画像上のOK箇所・NG箇所をなぞって指定するだけで学習データを設定できるため、専門知識がなくてもAIに学習させることができます。
検査を担うNT-1は、作成したAIモデルを使って対象物を判別します。一般的な画像検査で使われる形状認識と、ハイパースペクトルカメラで取得したスペクトルデータによる認識を組み合わせるほか、画像を細かく切り出してそれぞれを検査・判別することで、判別精度の向上を図っています。
パナソニックは、AG-HSS10を含むハイパースペクトルセンシングシステムを、食品加工業や製造業、研究機関などへ提案する方針です。同社が紹介するハイパースペクトルカメラの用途には、食品中の異物検出や果物・野菜の熟度・糖度の把握、塗膜の色や厚みのばらつきの検査などがあります。研究用途では、成分分布の可視化や微細構造の観察に加え、文化財などを傷つけずに材質や劣化状態を調べる非接触・非破壊調査にも活用できます。スペクトルデータの取得からAIによる学習・判別までを一連で提供することで、パナソニックは検査の効率化や省人化、歩留まり改善、生産性向上への貢献を目指しています。
AI学習に必要なデータ準備や設定の負担を抑えながら、高精度な検査まで両立している点に「AG-HSS10」の強みがあります。導入時の負担と検査性能の双方に向き合っていることは、実務での活用を考えるうえで大きな価値と言えるでしょう。
まとめ

いかがだったでしょうか?
パナソニックの「AG-HSS10」は、ハイパースペクトルカメラで取得したスペクトルデータとAI検査技術を組み合わせ、人の眼やRGBカメラでは見分けにくい違いの判別に対応するAI検査ソフトです。少ないデータでの学習、「なぞる」だけの簡単操作、高精度なAI検査という3つの特長を備えています。
AI検査では、精度だけでなく、学習に必要なデータ量やモデル作成の手間も実際の活用を左右します。「AG-HSS10」が、少ないデータでの学習、簡単な操作、高精度な検査を一つの製品で実現している点は、今回の発表で特に注目したいポイントです。
