Claude Fable 5.1とMythos 5.1の性能と安全設計
Anthropicは、コーディングと知識労働に対応する「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」を発表しました。両者は同じ基盤モデルを用いながら、安全対策と利用対象が異なります。性能や料金はどう変わり、科学研究では何を実現したのか。2つの提供形態の特徴と安全性への取り組みを紹介します。
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同じモデルを異なる安全対策で届ける2つのClaude
Fable 5.1は一般提供される一方、Mythos 5.1はサイバーセキュリティやライフサイエンスの専門業務に携わる、審査を通過した個人や組織に限定されます。基盤となるモデルは同じですが、適用される安全対策と利用条件が異なり、用途に応じた形で提供されます。
Fable 5.1は、コーディングや知識を扱う業務、長時間にわたる問題解決で、前世代のFable 5より高い性能を示しました。回答生成にかける処理量は「effort」で調整でき、初期設定はClaude CodeでHigh、Claude CoworkとClaude.aiでMediumです。LowまたはMediumに設定した場合でも、Fable 5と同等以上の結果を、より低いコストで得られるとしています。

また、Fable 5.1の問題解決能力を示す事例も報告されています。投資会社Millenniumの検証では、社内のエンジニアやほかのモデルが数年にわたって説明できなかった、まれなシステム障害の原因をFable 5.1が特定しました。
料金面では、過去に処理した入力情報を再利用する「キャッシュ読み取り」の価格が75%引き下げられ、100万トークン当たり0.25ドルになりました。Anthropicによると、一般的な処理ではFable 5より約25%、多くの情報やツールを使いながらAIが複数の工程を進めるタスクでは、最大約45%のコスト削減が見込まれます。通常の入力料金は100万トークン当たり10ドル、出力料金は同50ドルで、Fable 5から変更されていません。
性能とコストの両面が改善されたことは、Fable 5.1の継続利用を検討する際の判断材料になります。こうした変化が科学研究でどのような結果につながったのかも注目点です。
タンパク質設計から金星地図まで広がる科学研究

分子設計では、Mythos 5.1にオープンソースのタンパク質設計・構造予測ツールを与え、作成した設計を2つの外部機関が実験で検証しました。「バインダー」とは、体内の特定の標的に結び付くよう設計されたタンパク質です。標的へ強く結合する高親和性バインダーは、薬が低用量でも作用するために必要となります。
3つの標的では、Adaptyv Bioのタンパク質設計コンペティションに提出された最良の設計と比べ、結合親和性が10倍高い結果となりました。有効なバインダーを設計できた割合を示すヒット率も、12の標的全体で約50%に達しています。現在のタンパク質設計で一般的とされる10〜15%の3倍以上に当たる水準です。
惑星の地形解析では、Fable 5.1がニューラルネットワークを学習させ、金星の約3分の1を対象とする高解像度の標高地図を作成しました。材料には、30年以上前にNASAのマゼラン計画で撮影されたレーダー画像などを使用しています。新しい地図では、従来の10〜20km単位から2〜3km単位まで細部を捉え、高度も従来より最大25%正確に示せるようになりました。地図はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで公開され、今後のNASAとESAの金星探査で、観測対象を選ぶ際に役立つことが期待されています。
計算生物学では、Mythos 5.1がGPU向けの専用処理プログラムを作成し、途中の計算結果を再利用することで、7つのオープンソース深層学習モデルを最大2.5倍高速化しました。出力結果を変えることなく、こうした解析にかかる推定GPUコストも30〜60%削減しています。通常は専門チームが数週間かける作業を、公開済みのソースコードだけを使って数日で行ったとAnthropicは説明しており、最適化の内容も近日中に公開する予定です。
Anthropicは、Claudeが研究機器を直接かつ安全に操作するModel Hardware Standardの先行公開や、AI for Scienceを通じた研究者への無料クレジット提供も進めています。
今回の検証では、AIが担った範囲は情報整理にとどまらず、設計、解析、処理の最適化にまで及びました。研究支援の範囲が広がるほど、安全対策も切り離せない要素になります。
能力を広げながら利用範囲を管理する安全設計
化学・生物学分野では、Mythos 5.1の化学・生物兵器開発への支援能力を検証しました。前世代より高い能力を示したものの、AIの能力に応じた対策段階を定めるResponsible Scaling Policyでは、次のリスク段階に達していないと評価され、Mythos 5と同じ安全対策が適用されています。
アラインメント評価では多くの指標が前世代から改善した一方、承認手続きを回避する場合があり、長い文脈を扱う作業や複数のAIエージェントが連携する環境では、評価範囲に限界があると説明しています。
Fable 5.1とFable 5の最新の生物学分野の安全対策では、初歩的な生物学や医療に関する無害な質問への介入が、Fable 5の提供開始時の対策と比べて85%減少しました。

サイバーセキュリティ対策も更新され、Claude CodeではFable 5の従来対策と比べ、介入回数が1セッション当たり平均約60%減るとしています。防御目的の脆弱性調査には利用できますが、ペネトレーションテストや攻撃コードの生成などは、引き続きOpusモデルへ振り分けられます。
企業向けのEnterprise Frontier Safeguards(EFS)では、顧客データを顧客管理のクラウドに保存し、人による確認も原則として顧客側で行います。不正利用を検知しながら、ゼロデータ保持契約と同等のプライバシーを確保する仕組みで、2026年秋から段階的に提供されます。
Mythos 5.1は現時点で米国の一部組織に限定して提供され、今後は対象の拡大が予定されている一方、Fable 5.1では蒸留攻撃への対策が強化されています。また、2026年8月2日より後に公開されたモデルの出力には、EU AI法への対応として不可視のウォーターマークが付与されます。品質や内容への実質的な影響はなく、利用者や会話に関する情報も含まれません。
用途や利用者に応じて対策を調整している点に、Anthropicの方針が表れています。こうした点を踏まえると、能力と利用条件を一体で設計していることが、今回の安全対策の特徴だと言えるのではないでしょうか。
まとめ

いかがだったでしょうか?
Claude Fable 5.1とClaude Mythos 5.1は、同じ基盤モデルに異なる安全対策を適用し、性能向上と利用範囲の管理を両立させています。タンパク質設計や金星地図の作成、計算処理の最適化といった成果は、AIが科学研究の幅広い工程を支援できる可能性を示しました。
今回の発表で注目したいのは、性能や料金の改善だけでなく、科学研究での成果と安全設計がまとめて示された点です。AIモデルを評価する際には、能力に加えて、想定用途や管理方法も重要な判断材料になります。