2026.09.09 | テクノロジー

OpenAIがGPT-6 Astra発表 性能・安全対策・料金を解説

OpenAIは、コンピューター操作からソフトウェア開発、科学研究まで幅広い領域に対応する「GPT-6 Astra」を発表しました。従来モデルを上回る処理速度や判断力に加え、ユーザーが指定した範囲を守る安全性も重視されています。何ができるようになり、どのような対策のもとで提供されるのか。主な性能と仕組み、提供条件を紹介します。

画面を理解し、複数の作業を最後まで進めるGPT-6 Astra

GPT-6 Astraの特徴は、文章で回答するだけでなく、画面上の情報を読み取り、複数の工程を含む作業を進められる点です。オンラインフォームへの入力やCRMの顧客情報更新、カレンダー整理、オンライン調査、メールや文書編集ツールでの要約作成に対応します。Webサイトの制作やフロントエンドの品質確認、ソフトウェアのインストール・テスト、画面上で発生した問題の解決も可能です。
OpenAIが実施したOSWorld 2.0のシミュレーションでは、GPT-5.6 Solが1タスクあたり約75分で65.7%だったのに対し、Astraは約40分で72.6%を記録しました。約47%短い時間で、より高いスコアを達成した計算です。Codexの実行基盤も更新され、Astraの効率性と組み合わせた結果、Web操作能力を測るMind2Webでは、現在のGPT-5.6 Sol環境と比べてタスクの完了速度が1.9倍になりました。

ただし、時間はデモ実行時の測定値であり、実際の利用環境では異なる可能性があります。
資料作成では、既存のテンプレートや文章・ビジュアルのスタイルに合わせて、文書、スプレッドシート、プレゼンテーションを整えます。必要な文脈だけを反映するよう訓練されており、OpenAIは実務ですぐに使える成果物を出力できると説明しています。ChatGPTのSitesでは、プロンプトからWebサイトやWebアプリ、ゲームを制作し、そのまま公開・共有できます。
指示に解釈の余地がある場合、影響の小さい不足情報は文脈から補い、判断を左右する情報は要点を絞って質問します。Codexでは返答に依存しない作業を続けながら、重要な決定では利用者の判断を待ちます。
一連の工程を任せられることで、AIとの関わり方は「一つずつ指示する」段階から、「目的を共有して仕事を進める」段階へ変わる可能性があります。複数のツールをまたぐ作業を一つの流れとして進められる点は、新たな仕事体験として注目したいところです。

コーディングと科学研究を支える新しい仕組み

OpenAIは、GPT-6 Astraを同社史上、ソフトウェア開発に最も適したモデルと位置づけています。Astraの導入に合わせ、Codexには長時間の作業で蓄積した情報を保持・検索する仕組みが加わりました
AIが一度に参照できる情報の範囲は「コンテキストウィンドウ」と呼ばれます。従来モデルでは上限に達すると、それまでの作業を一つの要約へ圧縮していました。しかし、複雑な不具合の調査や大規模なコード修正では、失敗した理由や部品の動作といった情報が抜け落ちる可能性がありました。
Astraはコンテキストウィンドウをまたいでメモを残し、蓄積した情報を一つの要約へ繰り返し圧縮せずに保持できます。過去のメッセージやツールの実行結果も検索できるため、メモにない要件やテスト結果を後から探すことも可能です。

現在はCodexのconfig.tomlで有効にできる実験的な機能で、OpenAIは今後数週間のうちにAstraの標準設定にする予定です。
評価では、高難度の数学問題を扱うFrontierMath Tier 4(v2)で97.6%、未知のインタラクティブな課題を解く能力を測るARC-AGI-3で99.9%を記録しました。科学分野では、Astraが素数の間隔に関する2つの研究成果に貢献したとOpenAIは報告しています。
一つは、無限に多く存在する素数の組について、その間隔の上限を240から186へ改善した研究成果です。もう一つは、非常に大きな素数間隔に関する境界式で、80年以上変わらなかった項を改善したものです。OpenAIは両方の証明と検証資料を公開しています。また、Astraは研究用ソフトウェアでデータや結果を調べ、研究者による証拠の評価や次の調査対象の判断を支援します。
注目したいのは、過去の経緯を保ちながら作業を続けられる点です。単発の回答精度だけでなく、長時間の作業で条件や検証結果を引き継げるかどうかも、AIの実用性を測る重要な視点といえるでしょう。

高まるサイバー能力と安全対策、提供条件

GPT-6 Astraは、OpenAIのPreparedness Frameworkで「Critical threshold(重大水準)」に達しました。安全対策を外し、既知の脆弱性から攻撃コードを作る評価では、ExploitBenchで100%、ExploitGymで42.4%を記録しました。ただし、特定条件下の結果で、すべての脆弱性を発見できるわけではありません。
直近3か月の脆弱性を使った内部評価では、未知だった2件のゼロデイ脆弱性を発見・利用しました。ゼロデイ脆弱性は、修正策がない未知の弱点です。OpenAIはソフトウェアの管理者へ情報開示を進めています。
提供開始時は、セキュリティ上の問題を確認するコードレビューや修正に利用できますが、脆弱性を実証する攻撃コードの作成など、高度なサイバータスクには応じません。OpenAI Daybreakを通じて防御目的の利用範囲を段階的に広げる計画です。

認可されていない行動を推論や操作から検知し、自動停止する監視機能も導入しています。
安全対策を外した内部評価では、困難・実行不可能なタスクで認可範囲を越えた割合GPT-5.6 Solの48%に対し、Astraは0%でした。一方、Astraの推論過程はGPT-5.6 Solより監視しにくいという課題もあり、OpenAIは監視性の改善を研究課題に挙げています。
Astraは一部組織への提供を開始しており、今後数日間でChatGPT Plus、Pro、Business、Enterpriseに順次展開される予定です。OpenAI API、Microsoft Azure、AWS Bedrockからも利用可能になると発表されています。API名はgpt-6-astraで、標準料金は入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルです。対象となるAPI利用者はZero Data Retentionを利用でき、プライバシーを保ちながら安全性を監視するPrivate Safety Processingの試験も進められています。
能力が高まるほど、許可される作業と制限される作業が明確かどうかも確認すべき点です。Astraは、安全対策を提供方法の一部として組み込んだモデルと捉えられます。

まとめ

いかがだったでしょうか?
GPT-6 Astraは、画面操作や資料作成に加え、長時間のソフトウェア開発や科学研究まで支援できるモデルです。一方、サイバーセキュリティ分野では高い能力に対応するため、利用制限や監視機能も設けられています。
Astraの登場からは、AIを選ぶ基準が性能の高さだけでなく、任せられる作業の範囲や制御のしやすさにも広がっていることがうかがえます。評価スコアとともに、人が確認する工程をどこに設けるかも、導入時の検討事項の一つといえるでしょう。