2026.09.10 | テクノロジー

GoogleのWeatherNext 3とは?高精度化するAI天気予報

天気予報は、どこまで細かく、早く現実を捉えられるのでしょうか。Googleが発表した「WeatherNext 3」は、リアルタイムの衛星データを取り込み、最大5キロメートルの解像度で1時間ごとに予報を更新します。従来モデルから何が変わり、暮らしや社会に何をもたらすのか。主な特徴と活用範囲を紹介します。

世界の天気を5キロ単位で捉えるWeatherNext 3

Google DeepMindとGoogle Researchが発表した「WeatherNext 3」は、世界全体を対象としながら、地域ごとの気象を細かく捉えるAI気象予測モデルです。Brightbandによる独立したリアルタイム評価では、現時点で最も高度かつ正確な全球気象モデルとされています。
天気予報の実用性を左右する要素の一つが、時間と場所をどこまで細かく区切って予測できるかです。WeatherNext 3は、複数の空間解像度で1時間ごとの予報を生成します。空間解像度とは、気象の状態をどれほど細かな地域単位で表せるかを示すものです。例えば5キロメートルの解像度であれば、地表を約5キロメートル間隔の格子に区切り、それぞれの地点について予測します。
気温や水分量など、地表付近の主要な変数は5キロメートル、そのほかの地表変数は10キロメートル、風速などの大気変数は25キロメートルの解像度で扱います。

参照:Google YouTube

変数に応じて解像度を使い分けながら、地球規模の風の流れから地域の地形まで、異なる範囲の予測が物理的に矛盾しないよう設計されています。
従来モデルの「WeatherNext 2」は、25キロメートル間隔の格子上で6時間ごとに予報を生成していました。WeatherNext 3は最大5キロメートルの解像度で1時間ごとに更新するため、全球の気象状況を従来より約5倍細かく示せます。ここでいう約5倍とは、予測精度が一律に5倍になったという意味ではなく、全球の気象を表す細かさを指します。世界規模のモデルが、身近な地域の変化まで細かく捉えられる点は、天気予報を日々の判断に生かすうえで重要な変化といえるでしょう。こうした時間と空間の細かさを支えているのが、WeatherNext 3の学習に使用される新たな観測データです。

衛星と観測所のデータから変化する空を直接学習

WeatherNext 2を含む多くのAI気象モデルは、数値予報(NWP)モデルが生成したデータを使って学習してきました。数値予報とは、現在の大気の状態と物理法則を基に、スーパーコンピューターで将来の天候を計算する手法です。広い地域を予測するうえで有用ですが、従来のNWPモデルには約6時間のデータラグがあり、雨や地表温度など短時間で変化する要素の予測に偏りを生む可能性がありました
WeatherNext 3は、世界各地の静止気象衛星から届くリアルタイムデータを組み合わせ、変化し続ける大気の状態を直接取り込みます。静止気象衛星とは、地球の自転と同じ周期で周回し、同じ地域を継続的に観測する衛星です。嵐や前線などが急に発達した場合も、直近の観測結果を予報に反映できます。

各地に点在する気象観測所のデータから直接学習する点も特徴です。気温や湿度は、海岸、渓谷、山岳地帯などの地形によって、数キロメートル離れただけでも大きく変わることがあります。観測所の実測値を使うことで、従来の大気データでは捉えにくかった地域ごとの違いを予測に反映します。従来型の地域気象モデルには多額の計算費用がかかるため、高解像度の予報が十分に提供されてこなかった中南米、アフリカ、アジア太平洋地域でも、数十億人と現地企業が詳細な予報を利用できるようになるとGoogleは説明しています。
再生可能エネルギー向けの予測項目も追加されました。風力発電では、タービンの高さにおおむね相当する地上100メートルの風速を予測し、太陽光発電では、雲量と地上に届く日射量を予測します。送電網の運用事業者や再生可能エネルギーの開発事業者は、発電量を見積もり、電力需要との調整に活用できます。詳細な予報を得にくかった地域や、天候によって発電量が変わる現場にも同じモデルを届けられる点は、WeatherNext 3の活用範囲の広さを示しています。現実の観測データの活用は、従来のモデルが苦手としてきた雨や雪の予測にもつながっています。

難しかった雨と雪の予測をどう変えたのか

全球気象モデルは、雨や雪の予測を苦手としてきました。降水を生む雲の動きは狭い範囲で急速に変化するため、従来の物理シミュレーションで正確に再現するのは困難です。AIによる予報でも、降水域がぼやけたり、激しい嵐の境界を捉えられなかったりする場合がありました。
WeatherNext 3は、この課題に対応するため、2種類の降水データを学習に使用しています。一つは、NASAが衛星データを基に提供する「Integrated Multi-satellite Retrievals for GPM(IMERG)」です。もう一つは、衛星レーダーのデータを基にGoogleが構築した全球降水再解析データです。
全球を対象とした中期予報で基準モデルと比較した評価では、IMERGを観測基準とした場合、連続順位確率スコア(CRPS)が最大60%改善するなど、複数の観測データを用いた評価で予測性能の向上が確認されています。

CRPSは、複数の予測と実際の観測結果とのずれを測る指標で、値が小さいほど予測性能が高いことを示します。各数値は降水量の増減ではなく、予測性能を評価するスコアの改善率です。
WeatherNext 3は、Google検索、Geminiアプリ、Googleマップ、Google Maps Platform Weather API、Google Earth Engineに順次導入されます。Googleによると、1日以上先の降水予測では予測精度が最大50%向上し、従来の予報の信頼性が低かった地域ほど改善幅が大きいとしています。研究者や企業は、モデルを準備せずにBigQueryやEarth Engineでデータを照会できるほか、Google Cloud Storageから一括で取得できます。一方、Googleは、公式の天気予報や気象警報、防災情報について、地域の気象機関または国の気象当局が発表する情報を確認するよう案内しています。
研究成果を専門家だけにとどめず、日常的なサービスから使える形で届ける点にも、WeatherNext 3の実用性が表れています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
WeatherNext 3は、衛星や気象観測所のデータを取り込み、雨や雪に加え、風力・太陽光発電に活用できる気象情報まで1時間ごとに予測するAI気象モデルです。
天気予報が、外出前に確認する情報から、暮らしや地域の計画を組み立てるための判断材料へ広がっていく可能性を感じさせます。