2026.09.23 | テクノロジー

freeeが会計事務所向けAIエージェントを正式提供、特徴と事例を解説

会計業務の記帳やチェックを、AIにどこまで任せられるのでしょうか。freeeは「freee顧問先管理 | AIエージェント」と「freee Agent Hub」の正式提供を開始しました。共通業務を担う完成済みのAIと、独自のAIを作る仕組みの違いを、人が確認や判断に関わる設計や導入事例とともに紹介します。

完成済みのAIエージェントで変わる作業

「freee顧問先管理 | AIエージェント」は、記帳やルール提案、月次・申告書チェックなど、会計・税理士事務所に共通する業務を担う機能です。AIエージェントとは、回答を返すだけでなく、目的に沿って必要な処理を進める仕組みを指します。freeeがあらかじめ設計したものを提供するため、事務所側で一からAIを設計せずに利用を始められます。
先行導入した税理士法人古田土会計では、資料回収や紙の領収書などのデータ化、目視による記帳チェックに多くの時間を費やしていました。同法人は「freee顧問先管理」の資料回収機能とAIエージェントを組み合わせ、経営支援や面談に集中できる体制を構築しています。
freeeの発表によると、同法人では記帳エージェントによって、手入力にかかる作業時間を50%削減しました。新規顧問先のルール初期構築に要する時間も、AIの自動提案により、手作業の約2時間から10分以下へ短縮しています。

月次チェックでは、月に40分かかっていた目視確認が5分以下になりました。ベテラン職員のチェック観点をAIに組み込むことで、経験年数にかかわらず、チェックの精度や問題の検出網羅率を高い水準で維持できたとしています。検出網羅率とは、確認すべき問題をどれだけ漏れなく見つけられるかを示すものです。
両サービスの設計の基礎となるのが、freeeの掲げる「責任あるAI」です。実行力・説明責任・統制力・改善力の4要件に基づき、人の確認や判断を処理の流れに組み込んでいます。初回はAIが仮説と根拠を示し、人が確認・修正した判断を事務所のルールとして蓄積します。次回以降は蓄積したルールに沿って処理を進め、例外や重要な判断は根拠を添えて人へ返す仕組みです。
記帳・月次チェックを含むエントリープランは、1顧問先あたり月額1,000円(税抜)で、最低3顧問先から契約できます。申告書チェックエージェントは、freee認定アドバイザー制度の加入者であれば無償で利用可能です。
共通業務を担う完成済みのAIに加え、事務所独自の業務フローに合わせてAIを構築する選択肢も用意されています。

事務所のノウハウをAIへ 「freee Agent Hub」で独自の処理を組み立て

「freee Agent Hub」は、事務所独自の業務ノウハウを組み込んだカスタムAIエージェントを作成できる開発基盤です。プログラムのコードを書かずに構築する「ノーコード」に対応しています。一般公開されていないfreeeのAPIや製品と深く連携し、会計操作を自動化するための知識を備えています。APIとは、ソフトウェア同士で機能やデータをやり取りする仕組みです。
柔軟な推論が必要な処理はAIに任せ、答えが決まっている処理はルールに基づいて実行させます。資料回収から記帳、チェック、申告、経営支援まで、幅広い業務に事務所の手順や判断基準を組み込めます。
先行導入した株式会社SoVaでは、独自の業務フローに合わせて複数のエージェントを作成しています。「自動登録ルール作成エージェント」は、普段使う言葉で指示してルールを設定でき、設定時間の短縮につながっています。

freeeの発表によると、同社ではAIに学習を重ねた結果、導入5カ月で全記帳業務の約74%を自動処理できるようになりました。
新人とベテランが同じ基準で仕訳ルールを判断・提案できるようになった点も、同社の導入効果です。仕訳とは、取引を会計上の項目に分けて記録することを指します。
また、「債権債務消込エージェント」は、自動登録ルールでは処理しきれない消込作業を効率化します。消込とは、売掛金や買掛金などの記録と入出金を照合し、決済済みであることを確認・反映する作業です。「質問票作成エージェント」は、顧問先への確認事項を半自動で作成し、やり取りの負担を減らしています。
基本利用料は月額5,000円(税抜)で、1IDと5,000円分のトークン基本利用枠を含みます。トークンはAIが扱う文章などの量を数える単位です。追加IDは1IDあたり月額5,000円(税抜)で、同額分の基本利用枠が付きます。ユーザーライセンスが必要なのは、「管理者」と、エージェントの作成・管理ができる「AgentHub Editor」の権限を持つユーザーです。利用のみの「AgentHub User」はライセンスを消費しません。基本利用枠を超えた分は従量課金となります。
両サービスの利用には「freee認定アドバイザー制度」への登録が必要です。正式提供開始を記念し、対象期間内に契約を開始すると、対象料金が初月50%OFFになるキャンペーンも実施されています。契約開始日の対象期間は、「freee顧問先管理 | AIエージェント」が2026年9月15日〜10月15日、「freee Agent Hub」が2026年9月1日〜10月15日です。対象料金は前者のエントリープラン料金と、後者の基本利用料金・追加ID料金で、従量課金は対象外です。
SoVaの事例は、ルール設定から消込、顧問先への確認まで、事務所の手順に合わせて作成したAIを使い分ける具体例となっています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
freeeが提供する2つのサービスは、共通業務をすぐに任せる方法と、独自のノウハウを組み込む方法に対応しています。
先行導入事例では、作業時間の短縮とともに、担当者の経験に左右されにくい品質の標準化も報告されました。
人が確認や重要な判断を担う仕組みを土台に、会計・税理士事務所の業務へAIを取り入れる方法を示しています。