2026.09.27 | テクノロジー

Amazon出品をAIで支援、QuickとClaudeの連携とは

在庫の確認や価格の調整を、必要なときにAIへ頼む──そんな使い方から、設定した条件に沿って継続的に支援を受ける使い方へ。Amazonは「Seller Assistant」の機能強化と、外部AIツールにつなぐプラグインを発表しました。判断を支える機能、日常業務の自動化、普段使うAIとの連携という三つの変化を紹介します。

質問への回答から、事業全体を踏まえた提案へ

Seller Assistantは、Amazonが2023年に提供を始めた出品者向けの生成AIアシスタントです。当初は質問への回答や情報の提示、作業の簡素化を支援していましたが、その後、目的に沿って推論し、計画を立て、出品者の許可を得て実行する「AIエージェント機能」が追加されました。Amazonによると、世界の出品者の90%以上にそれぞれの母語で機能を展開しており、提案の採用率は90%を超えています。
今回の発表では、在庫、広告、商品情報など、複数の業務領域を横断した支援が紹介されています。従来、出品者が手作業でまとめていた複数のシステムの情報を、Seller Assistantが関連づけて検討し、提案につなげる仕組みです。

例えば、商品の販売状況を尋ねると、競争環境の変化を捉え、広告や関連商品の販促に生かせる機会を探ります。さらに、商品ページの改善余地も検討したうえで提案を作成するため、出品者は数値の確認から次の対応の検討まで進められます。
提案を支えるのが、事業の特徴を継続的に記憶する機能です。出品者ごとの価格設定の傾向、在庫サイクル、成長目標を記憶し、やり取りの文脈を提案に反映します。提案には理由も添えられ、出品者は根拠を確認しながら、内容の調整や別の選択肢の検討ができます。
データを視覚的に確認したい場合は、「キャンバス」を利用できます。データを可視化し、操作しながら検討できる作業スペースで、最新データを使ったシミュレーションや価格戦略の比較、広告キャンペーンの実績分析を、自然な対話で進められます。
技術基盤には、AIモデルを利用したアプリケーションの構築を支援する「Amazon Bedrock」と、AnthropicのClaudeモデルを採用しています。Amazonは、AIの基礎となる基盤モデルの技術に、25年にわたるコマース分野の知見を組み合わせたと説明しています。判断を支援するだけでなく、繰り返し発生する確認や対応を継続的に進める機能も加わります。

毎回頼まなくても動く、24時間の業務ワークフロー

在庫が設定した基準値を下回っていないか、競合の価格に変化はないか。出品者が繰り返し確認する業務を支援するのが、新たに発表された「Seller Assistantワークフロー」です。出品者がAmazonの販売管理画面「セラーセントラル」にログインしていない間も、状況を監視し、変化を読み取って対応します。
従来は、価格調整や補充計画の作成などを依頼されてから動作していました。ワークフローでは、必要な作業と動作の条件・制限を日常的な言葉で伝えておくことで、毎回依頼しなくても継続して支援を受けられます。
Amazonは設定例として、「上位10商品のうち、いずれかの評価が星4つを下回ったら通知し、対応計画の下書きを作成する」という使い方を挙げています。

評価の変化を監視するだけでなく、条件に該当した際の対応案まで用意する流れです。主力カテゴリーで競合に対して優位に立てる機会を探し、価格調整や商品情報の更新につなげるなど、複数の作業を組み合わせる設定にも対応します。
すぐに利用を始められるよう、設定済みのテンプレートも用意されています。対象は、出品アカウントの運営状況を示す「アカウント健全性」の監視、注文の要約、価格動向の分析、取扱商品を広げる機会の発見などです。既存のテンプレートを使うほか、自社の業務に合わせたワークフローを一から作成することもできます。
自動化の範囲は出品者が選べます。テンプレートと独自設定のどちらでも、提案の提示にとどめるか、操作の実行まで任せるかを指定でき、操作を伴う場合は実行前に内容を確認して承認します。また、すべての操作には、実行の経緯を後から確認できる記録「監査証跡」が残ります。
継続的な監視をAIに任せながら、実行の判断には人が関わる設計です。さらにAmazonは、Seller Assistantの機能をセラーセントラル以外でも使えるよう、外部のAIツールとの連携も進めています。

Amazon QuickやClaudeでも、Amazonの販売業務を進められる

Amazonが発表した「Amazon Selling Partnerプラグイン」は、普段使っているAIツールとAmazonの販売業務をつなぎます。Amazon QuickとAnthropicのClaudeで、商品情報、在庫数、販売実績などのデータに加え、Seller Assistantの提案・実行機能を利用できます。
Amazon Quickは、文書やスプレッドシートの作成、詳細な調査に対応し、メールやカレンダー、ファイルとも連携する仕事向けのAIアシスタントです。プラグインを使うと、Amazonの販売データを財務、マーケティング、製造などの情報と組み合わせられるほか、価格設定や在庫補充などを担う独自のAIエージェントも作成できます。
Claudeでは、すでに接続している会計ソフトや仕入れ先のデータとともに、Amazonの情報やSeller Assistantの機能を活用できます。

Amazonによると、接続にコードを書く必要はなく、約60秒で設定できます。Seller Assistantが記憶した事業の文脈も、セラーセントラル、Quick、Claudeの間で引き継がれます。
外部連携でもアクセスできる範囲が明確に制限され、操作の承認と監査証跡の記録が適用されます。利用するツールが変わっても、出品者のデータや操作を保護する仕組みが設けられています。
発表時点で、プラグインはAmazonの米国ストアの出品者向けにベータ提供されており、ほかの国・地域にも展開予定です。日本での提供時期は、今回の発表では示されていません。
別途、世界中のプライマリアカウント所有者、つまり出品用アカウントの主たる所有者を対象に、Amazon Quick Plusの12か月無料特典も案内されています。申し込み期限は2026年12月31日で、同僚を追加で2人指定し、それぞれ1年間無料で利用できます。無料特典の対象範囲は、プラグインの提供地域とは異なります。
Amazonは今後、連携する外部AIツールも増やす方針です。出品者が選んだAIに販売データと支援機能をつなぎ、普段の作業環境からAmazonでの販売業務を進められるようにすることを目指しています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
Seller Assistantの機能強化では、複数の業務情報を踏まえた提案、日常業務の継続的な監視、外部AIツールとの連携が示されました。
作業を任せる範囲を出品者が選び、必要な確認や承認を行いながら活用できる点も特徴です。
今後は、提供地域の拡大や連携先の追加により、利用できる環境がどこまで広がるかが注目されます。