2026.10.03 | テクノロジー

Gemini 4 Argonとは?サイバー防御に強いGoogle新AI

Googleが、AIモデル「Gemini 4 Argon」を発表しました。出力トークン上限は従来の6万4,000から100万へ拡大。現在はFairwind Programを通じて一部のサイバー防御担当者に先行提供され、Google社内でも利用されています。Argonの特徴や実力、安全対策、今後の提供予定を紹介します。

Google社内ですでに動き出しているGemini 4 Argon

Gemini 4 Argonは、Googleが「フロンティアモデル」と位置づけるAIモデルです。Argonは長く複雑な作業でも深い推論を続けられるよう設計されており、1回に出力できるトークン数の上限は、従来の6万4,000から100万へと拡大しました。数十万トークンを1回の処理で生成できる余裕を持たせることで、難しい問題を一度の流れで解くための推論の深さを高めるとGoogleは説明しています。
Google社内ではすでに数千人のGoogle社員がArgonを使っており、専門的なコーディングや踏み込んだリサーチ、文章作成などで活用されています。主な成果は次のとおりです。
1つ目は量子コンピューティングの研究です。Argonは、量子計算の一部の処理に必要な「時空間リソース」の最適化を支援しています。

時空間リソースは、量子ビットの数と量子ゲートの数を掛け合わせた値として示されており、ある事例では公表済みの基準をわずか数分で40%上回りました。
2つ目はデータセンターのメモリです。複数のArgonエージェントがデータセンター全体の稼働データを分析し、メモリを節約できる箇所を特定して最適化を適用しました。導入後には300TiB超のメモリを解放し、最終的な削減量は合計で500TiB〜1PiBと見込まれています。
3つ目はプログラムの書き換えです。Argonエージェントは、Google内のC/C++コードをRustへ移行しています。対象は数万行規模のre2やlibgav1などの主要ライブラリから、80万行を超えるFuchsia Zirconカーネルにまで及びます。重要なシステムを含むため、本番導入の前に自動・手動の監査やエミュレーションテスト、レビューが行われています。
Googleのオープンソース動画デコーダーlibgav1では、既存のRust版に含まれていたSIMD向け3万2,000行のコードを置き換え、映像出力を変えずに既存のRust版より2.7倍高速に動作する成果も示されています。

ベンチマークで見るGemini 4 Argonの実力

Googleによると、Argonは複数の評価で高い成績を示しています。
ソフトウェア開発では、実務に近い長期の開発タスクを評価するDeepSWE v1.1で77.9%を記録し、Googleはこれを過去最高水準としています。
Vals Indexでは、Argonが首位とされています。Vals Indexは、財務・コーディング・法務・税務の仕事でAIが生む経済的な価値を測る指標で、各分野は米国GDPへの寄与度に応じて重み付けされています。多段階の財務リサーチを評価するVals Finance Agent v2や、法務リサーチと文書作成を評価するHarveyのLegal Agent Benchmarkでも高い性能を示しています。主要な業務を最初から最後まで実行できるかを測るZapierのAutomationBenchでは51.3%で1位となりました。

視覚的な情報を理解する能力についても、専門的なグラフの分析や、長い動画から細部を読み取る用途が挙げられています。長尺動画の理解力を測るLVBenchでは91.7%を記録し、Googleは最先端の成績としています。
Argonはサイバー防御に重点を置いて訓練されており、ソフトウェアの脆弱性を自律的に見つけ、検証し、修正用のパッチを作成できます。信頼できる防御担当者とGoogle社内のチームには、サイバー関連の制限を外した状態で提供される予定です。
サイバー防御分野で活動する企業のWizは、重要な公共インフラを無償で守る取り組み「Scan for Good」でArgonを活用しています。初期の事例では、世界中の病院で使われる医療ソフトウェアから、機密性の高い個人情報が漏えいするおそれのある重大な脆弱性を発見しました。Googleによると、これは従来のフロンティアモデルでは見逃されていたリスクです。
脆弱性の修正力を測るCWE-bench v1では68%で1位タイとなりました。また、ソースコードを見ずに稼働中のWebシステムを調べるWiz社内の侵入テスト用ベンチマークでも、攻撃対象領域の発見、脆弱性の特定、検証用の証拠作成において3.8 Flash Cyberを上回っています。

広く提供する前の安全対策と、提供開始までの流れ

Googleは、最先端の能力を安全に公開するには段階的な進め方が必要だとして、Argonの提供範囲を少しずつ広げています。また、リリース前のモデルへのアクセスに関する米国政府の任意のプロセスにも参加しており、サイバー防御担当者への先行提供にはFairwind Programが使われています。
安全対策は、次の4つの領域で強化されています。
1つ目は悪用への対策です。Argonは、サイバー攻撃やCBRN(化学・生物・放射性物質・核)攻撃につながる有害なリクエストを拒否しつつ、正当な研究には応じるよう設計されています。モデル内部の反応を監視して悪用を見つける手法も改良され、Google社内外のレッドチームが手動と自動の両方の攻撃手法を使って検証しました。

2つ目はプロンプトインジェクションへの対策です。プロンプトインジェクションとは、悪意のある指示や文脈を紛れ込ませてAIの動作を乗っ取る攻撃です。Googleによると、Argonは同社のこれまでのモデルで最も耐性が高く、Gray SwanのIndirect Prompt Injection(IPI)ベンチマークでも高い耐性を示しています。
3つ目はミスアライメントの監視です。AIがユーザーの意図を超えたやり方でタスクを進めないよう、GoogleはArgonの思考過程と行動を監視し、必要に応じて処理を止める仕組みを導入しています。トレーニング中も同様の仕組みで監視しており、AIが監視をすり抜ける考え方を身につけないよう、監視で得た知見を学習に戻さないための対策を講じています。
4つ目はシステムの堅牢化です。高リスクの学習や評価を始める前に、サンドボックス環境を隔離・封鎖する対策を進めています。
今後は開発者・企業・一般ユーザー向けに提供を広げ、まず有料APIの利用者とGoogle AI Ultraの登録者から提供を開始する予定です。導入価格は入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルで、キャッシュされた入力は入力料金から95%割引になります。

まとめ

いかがだったでしょうか?
Gemini 4 Argonは、長期的な処理を想定した推論能力と100万トークンの出力上限を備えたAIモデルです。
コーディング、法務・財務、動画理解、サイバー防御について、ベンチマーク結果やGoogle社内での活用事例が示されています。
現在は一部のサイバー防御担当者への先行提供とGoogle社内での利用が進められ、今後は有料API利用者とGoogle AI Ultra登録者から提供範囲を広げる予定です。