2026.10.15 | テクノロジー

NVIDIAとCisco、AI基盤向け光規格「USFP」の開発を計画

AIモデルの大型化や利用の増加に伴い、AIを動かすデータセンターでは、計算能力に加えて通信容量や電力効率も重要になっています。NVIDIAとCiscoは、こうした課題に対応する光通信モジュール「USFP」の開発計画を発表しました。本記事では、AI基盤の拡大に伴う通信の課題と、USFPが目指す改善を解説します。

AI基盤の拡大で、通信容量と電力が課題になる理由

AIモデルの大型化や推論需要の増加に伴い、AI向けデータセンターでは、より多くの計算システムを接続する必要があります。NVIDIAの発表では、こうしたAI向けの大規模な計算設備を「AIファクトリー」と呼び、その拡張に伴うネットワークの複雑さや消費電力、コストへの対応を課題として挙げています。
計算システム同士のデータ通信を中継する機器が「スイッチ」です。NVIDIAの発表によると、AIファクトリーを拡大するには、一つの接続で扱えるデータ量を増やすことと、一台のスイッチでより多くの接続を扱えるようにすることの両方が必要になります。個々の接続の通信容量を高めるとともに、接続する計算システムの増加にも対応する必要があるということです。

スイッチが扱える容量の上限に達すると、さらにネットワークを拡大するために、スイッチの階層や光通信の接続を追加しなければならない場合があります。階層の追加とは、通信を中継する機器を段階的に増やすことです。NVIDIAは、階層を追加すると通信の遅延や消費電力、コストが増えると説明しています。計算設備を拡張する際には、設備間をつなぐ通信設備の増設も伴う場合がある点が課題です。
NVIDIAの発表では、電力当たり、スイッチ当たりに転送できるデータ量を高めることを重視しています。電力当たりの転送量を増やすことは、一定量のデータを送るために必要な電力を抑えることを意味します。一方、スイッチ当たりの通信容量や接続数を増やすことは、中継機器の階層を追加せずに、より多くの計算システムを接続するための方向性として示されています。
NVIDIAは、こうした改善が、インフラへの投資をより有効に活用することにつながると説明しています。既存の設備を生かしながら通信容量と電力効率を高める取り組みとして、NVIDIAとCiscoが開発を計画しているのが「USFP」です。

NVIDIAとCiscoが計画する「USFP」の役割

「USFP」は、着脱式の光通信モジュールに向けた新しい形状や接続仕様の設計です。NVIDIAの発表によると、既存の導入・保守方法を維持し、インフラを全面的に作り替えずに、同じ設置スペースで通信容量を増やすことを目指しています。
最初に計画されているUSFP対応モジュールは、既存の「OSFP」と同程度の大きさに、送受信を同時に行える16本の通信経路を収める構成です。この経路を「レーン」と呼び、USFPは1レーン当たり400Gb/sの電気信号に対応する設計となっています。比較対象の1レーン当たり200Gb/sの着脱式モジュールに対し、レーン数と各レーンの通信速度をそれぞれ2倍にするとしています。

これにより、帯域幅と機器前面の面積当たりの帯域幅を4倍にし、全体で12.8Tb/sの容量を実現する計画です。帯域幅は、一定時間に転送できるデータ量を示します。発表では、ネットワークの階層を追加せずに、1.6Tb/sで通信する機器をより多く接続できると説明しており、将来は32本以上のレーンへの拡張も可能な設計とされています。
電力効率は、同じ比較対象に対して約1.3倍とされています。この値はモジュールの通信に関する効率を示すもので、AI施設全体の消費電力削減率ではありません。また、信号処理を簡素化して遅延や消費電力を抑える光通信の設計にも対応します。
接続部分には、モジュールを差し込んだ後に高速通信用の接点を接続する二段階の構造を採用し、接点の摩耗を抑えて信号の品質を高める設計です。さらに、モジュール内部に専用の冷却回路を別途組み込まずに、最大100Wの放熱に対応するとしています。この数値は消費電力の削減量ではなく、熱への対応能力を示します。
両社はTE ConnectivityとAmphenolと協力し、USFPを収める部品やコネクター、モジュールを開発しています。今後は、複数の供給企業が参加するコミュニティ主導のプロジェクトを通じて、業界向けに仕様を公開する計画です。共通の形状や接続仕様を土台に、複数の企業が対応部品を開発できる環境づくりも、今回の取り組みに含まれています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
NVIDIAとCiscoは、着脱式モジュールの保守性を維持しながら、通信容量と電力効率の向上を目指す「USFP」の開発を計画しています。
今回の発表を踏まえると、AI基盤の拡張を計算設備の増設だけで捉えるのではなく、接続を担うネットワークまで含めて設計する視点が重要だと考えられます。
特に、通信設備の追加に伴う遅延や消費電力・コストの増加を見据え、設備計画の段階からネットワークの階層を増やさずに拡張できるかを検討することが、一つの判断材料になりそうです。