2026.11.08 | テクノロジー

フジテレビ、ドラマに生成AIを使う実験場「AI Sandbox」を設置

フジテレビ(株式会社フジテレビジョン)は2026年11月5日、生成AIを実写ドラマ制作に活用する実験場「AI Sandbox」を湾岸スタジオに設置したと発表しました。放送中の『救命病棟24時』をはじめ、複数のドラマですでに活用しており、撮影が難しい場面の表現や、制作現場の負担軽減につなげるとしています。

「AI Sandbox」の体制と実際のドラマでの活用方法

フジテレビは7月の組織変更で、デジタル戦略統括室内に「AIセンター」を新設しました。「AI Sandbox」はAIセンターのもとに置かれた実験場で、第1スタジオ(ドラマ・映画制作センター)、テックアートデザイン局、AI関連企業の株式会社ANDENTなどで構成するプロジェクトチームが、9月から運用しています。ドラマ制作に携わるディレクターやプロデューサー、技術スタッフが、外部のAIプロデューサーやAIデザイナーとともに、実際の制作を通じて活用方法を検証しています。
制作の進め方としては、撮影前の準備段階から脚本や目指す映像をスタッフ間で共有し、実写撮影、VFX(撮影した映像にCGなどを合成・加工する視覚効果の技術)、CG、生成AIの中から、作品やシーンに合った手法を選びます。

現在放送中の『救命病棟24時』(毎週月曜21時)では、撮影前に監督が思い描く映像を生成AIで可視化し、制作・技術スタッフで共有しています。完成イメージを事前にすり合わせたうえで撮影方法を検討し、従来の映像制作技術、VFX作業、AIを「作品のクオリティ」を第一に使い分けているといいます。
具体的な活用場面として、フジテレビは医療シーンの細かな映像処理や、実際の撮影だけでは実現が難しい事故現場の表現を挙げています。第一話の爆発事故シーンでは、空撮の映像自体を生成AIでつくった架空の風景とし、そこに煙を合成しました。
「AI Sandbox」の技術統括を務めるテックアートデザイン局長補佐の真崎晋哉氏は、すべてをAIでつくるのではなく、従来のVFXなどと組み合わせ、作品にとって最も良い方法を制作スタッフと考えているとコメントしています。また、効率化だけでなく映像表現の幅を広げ、経験や知見を社内に蓄積することを大きな目的に挙げています。

撮影の制約への対応と、全ドラマへの展開計画

年間16本の地上波ゴールデン・プライム帯の連続ドラマを制作するフジテレビは、撮影環境の変化への対応策として、生成AIの活用を検討しています。作品が目指す表現を実現するために制作手法の選択肢を増やし、撮影条件による制約への対応や、現場の負担軽減、安全性の向上につなげる方針です。
ドラマ・映画制作センター部長の長嶋大介氏は、場所や天候、法令、安全面などの制約で撮影が困難なシーンの表現から、制作初期のイメージ共有まで、活用の場面は多岐にわたると説明しています。長嶋氏は今回の取り組みを、AIという新たな選択肢を加え、連続ドラマ制作のワークフロー全体をアップデートしていくものと位置づけており、現場のプロデューサーからも、取り得る選択肢が増えていくのは助かっているという声が出ているそうです。

また、『救命病棟24時』のプロデュースを担当する足立遼太朗氏は、特に災害シーンや海外設定のシーンで、想像を超える映像クオリティが実現しているとコメントしています。
効果の面では、生成AIを活用した一部の映像制作工程で、従来の手法と比べて作業工数を最大70〜80%削減できることを確認したとしています。ただし、フジテレビは70〜80%という数値について、特定工程の検証結果であり、作品全体の制作費の削減率や、制作工程全体の平均削減率を示すものではないと説明しています。
今後の予定として、フジテレビは2026年10月期から、毎クール1本以上のドラマを「AI強化枠」に設定し、「AI Sandbox」で実際の作品制作に取り組みます。得られた経験や知見は社内で蓄積・共有し、活用の幅を広げていく方針です。さらに2027年10月をめどに、フジテレビが制作するすべてのドラマで、作品やシーンに応じてAIを活用できる体制を整えるとしています。

まとめ

いかがだったでしょうか?
フジテレビは「AI Sandbox」を設置し、生成AIを実写撮影やVFXと並ぶ制作手法の一つとして、放送中のドラマで使い分けています。今後は取り組みをフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の映像関連企業にも広げ、2029年度にはFMH全体で国内トップベンダーレベルのAI活用機能を保有することを目指すとしています。生成AIを使う工程と効果の範囲を明示したうえで、実際の放送作品に取り入れたフジテレビの取り組みは、テレビ局での生成AI活用の一例として注目されます。